合言葉は「SHIMOKITAから世界に」。小劇場で20年、30年と活躍し続ける男性俳優たちと立ち上げた劇団「ゴツプロ!」は、今年で10 年目。主宰者の塚原大助さんは、この劇団で日本の伝統芸能を取り入れたオリジナルの作品を上演し続けています。12月に東京・下北沢のザ・スズナリと台湾・北投(ペイトウ)で公演する新作のタイトルは『たかが10年の祭り』。台湾を足がかりに世界に小劇場文化を広めようという塚原さんは、本気です。
俳優であり、プロデューサーでもある塚原大助さんは、10年前に「ゴツプロ!」を立ち上げ、地方公演、海外公演とその実績を重ねてきました。
「もともと、小劇場で20年、30年と演じているメンバーが集まって、劇団を立ち上げ、小劇場のてっぺんである本多劇場を目指そうと。そして地方公演、海外公演を実現しよう。この3つを目標に、2017年には法人化しました」
幸運なことに海外との縁はすぐやってきました。
「ちょうど、台湾からVMシアターという台湾のミュージカル劇団がありまして、そこで制作をやっている男性が日本の演劇の制作を勉強したいと来日されていたんです。ちょうど僕も台湾の劇場を視察して帰ってきたばかりだったので、その人を紹介してもらい『僕らも台湾で公演をやりたいんだ』という話をしたんです。ちょうど「ゴツプロ!」の第2回公演『キャバレーの男たち』を台湾の方に観てもらうことができました。そうしたら『もう絶対に台湾でやってほしい』という話になったんです」
話はとんとん拍子に進みました。
「台北の烏梅劇院(ウーメイシアター)にその芝居のDVDを送ったら、芸術監督が是非来てくださいと。それで、2018年に最初の三つの目標、本多劇場、海外公演、大阪公演が一気に決まったんです」
せっかくの海外公演だから、日本の伝統芸能を取り入れよう。そこで、塚原さんたちは、1年がかりで津軽三味線にチャレンジしました。
「2018年1月に本多劇場。大阪・近鉄アート館。2月に台北・烏梅劇院。ゴツプロ第3回公演は『三の糸』という作品でした。それに向け、メンバー全員で津軽三味線を習ったんです。いやあもう、何もかもやばかったですよ(笑)。僕は楽器なんて何もできなかったし、間の細い3本の弦をバチで打ち分けるなんて。猿みたいに練習して、でもちょっと弾けるようになってくると、どんどん楽しくなってきて。メンバー全員、苦労していましたが、最後は劇中で8分間の演奏を披露しました」
指導してくれたのは、日本の津軽三味線の大家、小山会の小山豊さん。
「もともとは目の見えない方が弾き始めた楽器なので、譜面がないんです。小山豊さんのお祖父様が、初めて譜面をつくったり、合奏をし始めたのだそう。その方に教えていただいたのですが、最後は本当に驚いておられました」
第4回は阿波踊りを取り入れた『阿波の音』。
「阿波踊りもね、ずっとスクワットしているようなものでして。僕は肉離れを起こしたこともありました。でも踊れるようになったら本当に楽しくて、生演奏で鳴り物も入れて、お客さんにもすごく喜んでもらいました」
第5回は津軽三味線と尺八の生演奏で民謡を取り入れた『狭間の轍』を。とうとう3年連続で台湾公演を果たしました。
「海外にもっていくなら、日本の伝統芸能を取り入れたいという思いが強くありました。それと、1回目から6回目までは作・演出をふくふくやの山野海さんがやってくれたので、彼女の意向もありました」
第6回『向こうの果て』は、コロナ禍の緊急事態で、7回を生配信。そのうち4回は無観客で開催しました。小泉今日子さんが初の女性キャストとして出演したことでも話題になりました。