2007年に『刑事ボギー』というショートムービーを撮ったのを手始めに、映画を撮り続けている照屋年之さん。このほど自ら監督と脚本を手掛けた3本目となる長編映画『かなさんどー』が公開されています。
沖縄を舞台に撮り続ける照屋さんの映画への情熱は一作品ごとに深まっているようです。
お笑いコンビ、ガレッジセールのゴリさんとしても人気を確立している照屋年之さんが、映画を撮ろうという当初のきっかけは、自分の強い意志ではなかったのだそうです。
「僕はもともと映像が大好きなんですが、そこに出たかった人間ですから。だからそれを撮ろうという考えはなかったんです。あるとき、吉本が芸人50人に短編映画を撮らせるというプロジェクトを立ち上げたんですね。吉本から映画監督を出すんだという意向があったようです」
そこで、日大芸術学部を出ていた照屋さんに声がかかりました。
「僕は映画学科の演技コースだったんですけどね。でも一瞬、躊躇していたら、映画監督の紀里谷和明さんに『そんなチャンスは誰にでも来るわけじゃないんだから、撮ってみなきゃ』と言われて、それじゃ撮ってみようと思ったんです」
初監督作品は『刑事ボギー』。15分ほどの短編映画でした。
「『裸の銃をもつ男』というアメリカのコメディ映画が大好きだったので、そういうのを撮りたいと思ったんです」
『裸の銃をもつ男』は、いくつかの有名な映画のパロディを合体させたようなコメディ。『刑事ボギー』を拝見しましたが、冒頭は『探偵物語』の松田優作を彷彿とさせたりもします。ボギーのキャラクターも立っていて面白いのですが、ご本人は、もう二度と撮りたくないと思ったのだとか。
「現場がつらすぎて。監督をやったことのない人間が簡単にできるものじゃなかった。照明、カメラ、美術、演者。全員当たり前のように監督に指示を求めてきます。でも僕に聞いてくれるな、という感じです。判断できないことが多すぎた。現場をうまく回せないから、時間が押す。そうすると『ちゃんとやってくれよ』という態度が見えてきます。こっちは必死だし、投げ出すわけにはいかない。なんとか撮影を終えて、もう二度とやらないと思ったんです。でもね、編集をやって、物語が生まれた瞬間に、これはもうやめられないな、と思いました」
物語が出来上がり、そこに登場人物が生きている。その状況は照屋さんにとって初めての奇跡のような快感であり、経験だったのです。
「そこからは中毒(笑)。頭の中で描いた自分だけの妄想が脚本で文字になり、みんなと物語を共有して、映像を撮って作品になると、観客に自分の頭の中を見せることができるんですから。この快感はヤバい。しかも自分が狙っているところで、お客さんが笑ってくれるんですから!この快感はもう中毒になりますよ」
出来上がった作品で味わう快感。でも2作目、3作目と、やはり現場ではまだつらかったそう。
「3作目、4作目である程度認められる作品を撮れたので次も話が来るようになった。それで、今回の『かなさんどー』は14作目です。もう現場でも焦らず、指示もできるようになりました。落ち着いて全部を見られます。チームもできましたしね」。