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    第243回:照屋年之さん(映画監督、ガレッジセール・ゴリ)

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《2》神様がくれた満開のテッポウユリが香り立つシーン

 映画作りには演者として経験してきたことも大いに役立っていると言います。

「自分が演者でもありますので『演者としてこのセリフを本当に言いたいかな、演じたいかな』というのを常に考えていますね。脚本を書くときに、自分がその演者になりきってセリフを喋りながら『日常でこんな言い方しないな』とか思って言い方を変えたりします。だから、演者さんに脚本でクレームを言われることもあまりないし、今は割と撮影も早い方だと思いますよ。自分の頭のなかでカット割りも作っていくので、現場ではイメージと違っていたりするときだけ、修正します。観ている人の気持ちが途切れないようにしたいと思うんです」

 いつも演者の立場で考える。そんな照屋さんが今回『かなさんどー』でもっともこだわったのは、父親役の浅野忠信さんの涙のシーン。
 物語は母の死に立ち会えなかった父を恨む娘が、東京から沖縄に戻ってくるところから始まります。だんだんと両親の想いを知っていく彼女は、もはや余命わずかで認知症でもある父と対峙します。

「クライマックスで、浅野さんに泣いてもらうシーンがあったんですが、10回ぐらい撮ったんですよ。僕のなかで、理想的な泣き方があって。いつか殴られるかもと思いながら『違います』と、ダメ出ししました。すごいなと思ったのは、浅野さん、カット、となると1回涙を拭いて、ゼロの状態にして『ちょっと集中させてください』とおっしゃって。本当に難しい注文だったんですけど、一度も休憩せず、最後は応えていただけました。カメラマンさんも胃が痛くなったとおっしゃっていました」

 テッポウユリの咲き乱れる場所も印象に残ります。

「あの場所は過去に写真でしか見ることができず『このあたりにこれくらい咲きます』という感じで撮影日を決めざるを得なかったんです。だから、この日に満開に咲いてくれないと困るなという感じだったんですが、自然のことなので本当に賭けでした。予備日もなかったし。ここで雨なら雨で撮ろうと。咲かなかったら、白い紙を丸めて奥は埋めて満開に見せようとかいろんな予防策を考えていました。そうしたら神様が味方してくれて、本当に満開になったんです」

 ここは必見の幻想的なシーンです。
 ユリの花の強い香りが画面から漂ってきそうなくらいなのです。

「テッポウユリは夜に強い香りを出すようで、すごく素敵な時間でした。暗い闇の中で、真っ白い絨毯が広がると、あの世っぽくも見えますよね。ぜひ映画館の大きなスクリーンで観ていただきたいですね」。

照屋年之さん

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