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    第249回:野村万之丞さん(六世野村万之丞、狂言師)

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《2》ランチがてらにふらっと観られる狂言会を

 伝統も、新しさを加味しなければ続いていかない。「人気」を必要とされる芸能はなおさらのことだ。
 同世代にも、狂言の魅力を伝えたい。そこで万之丞さんは『ふらっと狂言会』を立ち上げた。

「もちろん、それまでに父が続けてきた『ファミリー狂言会』というのも好評なんです。毎年本格的な狂言会を4回公演していて、午後にその公演がある。それで、その会の午前中を『ファミリー狂言会』として、子どもも見られるような、老若男女家族で楽しめるような公演をしているんです。それで、その枠をもらって、何か考えてみろと言われました。今思えば、父は僕の経験のために、とっかかりとしてこの枠をくれたんだなと思います。さすがに本格的な方はまだ任せられないけれど、いずれはやらなければならないわけですから。それで『ファミリー狂言会』を年に2回、もう2回は若者や初心者が来やすいよう、イベント的な『ふらっと狂言会』を立ち上げたんです。第1回は2023年の4月。今回は5回目なんですよ」

 ふらっと、は、英語の「flat」の意味も含んでいる。

「敷居が高くない、フラットですよ、という意味ですね。それで、どうしたら名前だけじゃなく、中身もそうできるかと。ただ一応、古典芸能なので演目や内容はさわれない。もちろん、わかりやすいものを選びますが。それで、演目以外のところで楽しんでもらえる工夫をいろいろ考えています」

 まずチラシは漫画家の東村アキコさんに絵を依頼。ポップなイメージをつくった。入場料も、3000円と破格。

「映画も2000円ぐらいでしょう。簡単な飲み会で3000円くらいかな。気軽に出せる感覚。そういう感覚で観られたらと思いまして。1日会場を借りているからこそできることなんですが。千駄ヶ谷の国立能楽堂って、とても神聖で、いい意味で荘厳。でも初めての人は肩が固まってしまうような感じがするんじゃないかなと思うんです。もちろん、豪華で本格的な会ならいいんだけれど、若者や初めての人は萎縮してしまうかもしれません。だから、ロビーをテーマパークみたいにしちゃって、東村さんのイラストを等身大パネルにして、フォトスポットにしたり。いろんな楽しみをつくっています。始まる前も終わった後も、ウキウキわくわく楽しめるようにしたいんです」

 日曜日の11時開演で、12時半終了という時間も、ふらっと立ち寄れるように考えた。

「友達とランチの約束をしていたら、1時間半だけ早く集まりませんか、という提案です。だから、ロビーには付近のランチマップも用意しているんですよ」。

野村万之丞さん

《3》顔も中身も三人三様。成駒屋三兄弟とも連携を

 実際の狂言会では、能楽堂にBGMが流れることはないが、この日は特別に流すことにしている。

「空気感を朗らかにしたいんです。影アナも自分たちでやるんですよ。その日の意気込みも伝えつつ。親しみやすさを随所に」

 親しみやすさというところでは、会の最後には三兄弟トークも用意されている。万之丞さんは三兄弟なのだ。

「28歳、26歳、21歳の三兄弟です。お客さんたちも同世代だとしたら、さっきまで舞台ですごい古典芸能をやっていた遠そうな人たちが、終わった後に普通に家で話しているようなフランクな感覚で喋っていたら『あ、なんか同じ時代に生きてるんだな』と感じてもらえるんじゃないかなと思うんです。だから、お客様の質問に答えたりもします。でも、日本人は手を挙げるのは得意じゃないから、匿名で、googleフォームに質問を送れるようにして。僕らはその場で質問を選びます。そういう演目外のところで、狂言の格式を崩さずにプラスアルファできることを探っていきたいと、いつも挑戦しています」

 このトークショーは大人気。毎回、3人に一人はアンケートに感想が記入されている。中には「本当の兄弟ですか?」というのもあったそう。

「顔も中身も三者三様なので。でもそれが個性があって、舞台をやっていく上ではありがたい。三兄弟で一つの演目を共演しているんですが、狂言は二人とか三人の演目が多いんです。だから三人、という数字もとてもありがたくて、これから死ぬまでにたくさんやるんじゃないかな。本当にまだ初期段階の20代の僕ら三人の共演はぜひ今観ておいてください」

 今回の第5回目では、初めての企画で、歌舞伎の成駒屋三兄弟ともコラボが始まる。

「成駒屋さんも三兄弟でやっている主催の公演があるんです。それで交わるというよりは、それぞれの公演を両方買ってくださった人に、抽選で6人のトークライブに招待するとか、お互いのステッカーをプレゼントするとか、そういうところから始めようと思っています」

 歌舞伎も子役から役者の成長を追いつつ、家ごとの特色を楽しんでいく芸能である。野村家の三兄弟は、狂言をそのように楽しむ新たな形を作っていくかもしれない。

野村万之丞さん

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