5月21日から東京代々木のスペース・ゼロで開催される悪童会議「見よ、飛行機の高く飛べるを」で、明治時代の先生を演じる、木原瑠生(きはら・るい)さん。ミュージカル『刀剣乱舞』などでも人気の彼は、演劇に本気で取り組む志の高さを胸に抱く。演出家・茅野イサム氏との出会い、舞台の難しさと楽しさ。Z世代の彼が今思う、表現とは、芝居とは。
2.5次元系のイケメン、という言葉があるとしたら、まさしくそういう人だろう。
昨年、このスペシャルインタビューに演出家であり脚本家であり俳優でもある、茅野イサムさんにご登場いただいた。私は紹介者のほうじょうのりさんと一緒に彼の演出するミュージカル『刀剣乱舞』 祝玖寿 乱舞音曲祭を横浜・Kアリーナに観に行った。
なんというか、想像していたやわなものとは違った。一人ひとりの若い俳優たちは熱唱し、自らの存在を2万人という客の前に焼き付けようとエネルギーを放つ。時には客席を走り回り、自分を推してくれるファンの前に突然、立ったりするのである。
そのとき、へし切長谷部を演じていたのが、木原瑠生さんだった。
「『刀剣乱舞』のキャラクターは、ひとりひとりが刀の精なんですね。へし切長谷部という刀は、織田信長が膳棚の下に隠れた茶坊主を、棚ごと圧し切ったことから名付けられたそうです。キャラクターとしては、主(あるじ)への忠誠心がものすごく強い。他の刀剣男士に対しても、平等だったり、何かを教えたりするんです。でもちょっと抜けているところもあるという。でもその刀って、結局、信長から下げ渡されたようなんですね。だから、刀の気持ちになって考えると、信長に対しては忠誠心と同時に複雑な気持ちがあると思います。
その細かい心理みたいなものは、結構考えさせられます。普通の人間じゃないし。どこか人間とは違う視点を持っていないといけない。それは僕だけではなくて、刀剣男士全員、それぞれが考えていると思います」
茅野イサムさんと出会ったのは2年ほど前。厳しい指導だという噂もあるが、この若い人たちに深くものを考えさせることができる演出家なのだ。木原さんは茅野さんにどんな印象を持ったのだろう。
「『おまえは何も分かってねえ』と言われました。一生忘れないなと思うことも言われたけど、それがあったおかげで、今があるのは確かなことなんです」
木原さんはそれまで、シンガーとしての仕事や映像の仕事をしてきてはいる。でも、茅野さんの舞台はそれまでの考えでは通用しなかったということだろう。
「そうですね。だから何もわからず、ただへこんで。でも、へこんだままじゃどうしようもないから。理解しようと思いました。ちょっとずつ、仰っていることが理解できるようになってきた。そこから180度人生が変わったように思います。それがあったから、今の自分がある。初めて見る景色とか、新しいものに出会わせてもらったんです。実は僕は、その2年前の頃って、ちょっとあきらめかけていたんですよ」
あきらめかけていたから、ゼロスタートの気持ちになれたのかもしれない。
「そこから去年はアリーナツアーができて、富士急ハイランドで野外ライブも経験できて。今年は東京ドームもあるんです。アリーナで、階段を登り降りするのとかは大変ですけれど、あれだけキャストがいるカンパニーだからあの広さを回れるし、お客さんの近くに行けるのは、僕らも楽しいんです。喜んでくださるのがわかるから」。