アイドルから始まって、やがてタレントに、そしてライフスタイルの発信者へ。デビュー40周年を迎えた渡辺満里奈さんは、外からは軽やかに自分であり続けるように見える。芸能人であり、普通の人として生きようとする彼女のあり方は、多くのファンの視線を浴び続けている。このほど出版されたフォトエッセイ『不機嫌ばかりな私たち』(講談社)について、またこの40年を振り返っての今を語ってもらった。
私事ながら、筆者がこの40年のうちに渡辺満里奈さんとお会いするのは、おそらく4度目である。一度目は「non・no」で愛読書の話を、二度目は「saita」で台湾茶の話を、三度目は「ミセス」で趣味の手芸の話を聴いた。いつも彼女の話は探究して咀嚼して、それをわかりやすく伝えてくれるものだった。趣味のジャンルは幅広く、そしてセンスがいい。彼女はまったくそういうことを意図していないと思うのだが、トレンド・セッターになり得る人なのである。
同世代の女性たちを肩を並べて歩く友達としているような、そんな感じが心地よく、だからいろんな女性誌で引っ張りだこになる。
でもそんな流れのなかで、渡辺さんはこんなことを考えていたそうだ。
「20代後半あたりまではもっとすごい人にならなきゃいけないのかな、ということにとらわれていたんだと思いますね。そうじゃなくて、私は他の誰にもなれないし、自分自身でしかない。大人になるにつれてそういうことに気づいて、楽になった気がします」
「何者かにならないといけない」という想いは、出産や子育てによっても変化した。
「出産とか子育てとか、自分の思い通りにならないものを育てるという修行ですから。子育てをして気づいたことは大きいです。自分自身でいることしかないし、それが大切なことなんだと思いましたね。何者かになる必要もない。人からどう見られるとかより、自分のなかで納得するしかないんだなと。それから40代から今に至る間で、自分が置かれた恵まれた立場、人に支えられていることを実感する時期だったなと思います」
結婚し、子どもが二人。家庭を大事にしながら、顔を知られている有名人として芸能生活を続けつつ、家庭生活を営む。それだけで本当に大変なことだと思うのだが。
「そうですね。今は本当にそれだけでもすごいよ、と自分に言ってあげられるかな(笑)。でも、40年前の自分は本当に何もわかっていなかったし、気がついたら40年経っていたという。こういう役をやりたいとか、こういう番組をやりたいとかいう欲が全然なかった。人としてバカではいたくなかったから、本を読んだり映画を見たりして武装していましたけど。純粋に好きなものを見て、追求してというのは、年を重ねてできるようになったことですね」。