結成18年。昨年は結成15年以上のお笑いコンビが王者を競う「The second」でベスト16にまで残った母心。嶋川武秀さんと関あつしさんは、NSC東京校8期の卒業生だ。嶋川さんが女装して挑む歌舞伎漫才はもちろん、最近は嶋川さんが富山県高岡市の市議会議員から富山県議会議員になったことから、政治をネタにした漫才も面白くなってきた。
お笑いコンビ・母心は、いわゆる「師匠をもたない」養成所出身の2人だ。吉本興業が手がけるNSC東京校の8期生。嶋川武秀は、早稲田大学を卒業し、お笑いを目指したという。
「あんまりないケースかもしれませんね。お笑いを全然知らなかったし。富山のチューリップテレビの開局10周年で、富山の学生を使ったプロジェクトをやったんです。僕は東京にいた富山出身の1人で、友達が慶応にいて、早慶コンビでお笑いをやろうということになりました。それで番組企画として僕らが吉本に送り込まれてお笑いを始めたんです。吉本の劇場で揉まれて、そこでめちゃくちゃ滑って。普通なら辞めるんでしょうが、これは一生をかけて学ばなくちゃいけないと思ったんです」(嶋川)
なぜ辞めなかったのか。そこが嶋川さんの面白いところ。
「うまく行っていることには興味がないんですね。例えば勉強とか。勉強はすればそのまま成績に反応します。でもお笑いはどんなに考えても、面白いことって言われても、うまくいかないんですよ。今振り返って考えると、僕は人生で簡単にうまくいくことを選ばないんですよね」(嶋川)
どのくらいうまくいかなかったかは、その開局10周年イベントの後、吉本のプロデューサーが新たな就職先を探したほどだった。
「誰も笑わない。本当に滑ったんですよ。それで、担当していた吉本のプロデューサーが『あんた芸人向いてないから辞めた方がいい。せっかく早稲田まで出て、人生変えちゃいけないから』と、就職先を4つも持ってきてくれたんです。どれでもいいから選びなさい、って。でも、それを断って東京のNSCに入り直しました」(嶋川)
相方の関さんは、嶋川さんのそういうところに呆れながらも感心している。
「こんな真面目な感覚で芸人になった人、聞いたことがないですよ。ただ嶋川はタレントにはなりたかったみたいで、学生時代、親に内緒で劇団の通信教育を受けていたみたいです」(関)
「表には出たい気持ちはあったみたいです。ただ自分が思っているのと違う展開というものにすごく興味を抱くんですよね」(嶋川)。