
宇宙。マルチバース。ダークマター。ダークエネルギー。ブラックホール。…果てしなく見えるそれも、小さな小さな素粒子を研究することで見えてくるものがある。…宇宙のわからなさを研究し続ける野村泰紀さんは、しかしそんな話をYouTubeで万人に向けても実に楽しげに語れる学者だ。『95%の宇宙』(SB新書)を上梓された野村さんに、今の自分を形成してきた”素粒子のようなもの”を分析してもらった。
野村泰紀さんの近著『95%の宇宙』を読むと、宇宙論を語るとき、物理学のなかでもさまざまなアプローチが必要になっていることがわかる。
例えば相対性理論。素粒子。量子力学。
「多くの観測と理論的考察。その繰り返しで、宇宙を研究し続けています。そして論文を書く。今、アメリカ、カリフォルニア大学バークレー校に所属していますが、1日中宇宙のことを瞑想しているわけではなく、日々忙しくしています」
宇宙論に関して、論文を執筆するというだけで大変そうだが、まず、研究成果はプレプリントと呼ばれる電子掲示板に公開されるという。アメリカ西海岸で午後5時に、数十から数百に及ぶ新しい論文が公開されるので、それをフォローする。またそのプレプリントを正式な論文とするためには、査読の上、専門の科学雑誌に掲載される必要がある。この他人の論文の査読作業を、野村さんは年に10本ほどこなす。
大学での授業や試験もある。学会に呼ばれれば世界のあちらこちらへ。また研究のための資金確保、講演、科学雑誌の執筆なども大切な仕事だ。
「主に僕が今やっているのは、初期宇宙です。高エネルギー、高密度の状態での素粒子物理を研究しています。もともと宇宙論と素粒子論は分かれていなかったんですが、今は専門化が進み分かれています。ただ分野的には結構被っているので、宇宙論にシフトしつつ、ヒックス粒子とか、ちょっと飛んで量子重力、超弦理論などの素粒子論をやっています」。
