岩崎宏美さん、野口五郎さん、ちあきなおみさん、五木ひろしさん。コロッケさんのモノマネで驚くのは、誰もがその人とわかる特徴をピックアップしているところだ。
その鋭い観察眼と豊かな想像力はどんなふうに育まれたのか。
「姉の影響もあり、15歳から人前でものまねをやっていました。ですが、幼少期はすごく人見知りな性格だったんです」
今のコロッケさんからは想像もつかない。「人見知り」が観察眼を磨いたという。
「人見知りだから、実際にその人と話すよりも、『どんな人なんだろう』と想像するのが当たり前の生活だったんです。この人の動き、オットセイみたいなだな、とか(笑)。そうすると、首をキュキュッと左右に振って動かすだけで、一人で笑っちゃうんですよね」
そういう想像力は、母親譲りなのかもという。
「面白い母親でね。橋幸夫さんが、歌うときに、あっち向いたりこっち向いたりするのを見て『この人、知り合いが多いんだわ』と言ったりするんです(笑)」
もう一つ、コロッケさんが観察眼と想像力をたくましくするようになった原因は、右耳が聴こえなくなったことがあった。
「中耳炎がひどくなったんですが、家が貧乏だったので、母に病院に行きたいと言えなくて。放っておいたら、真珠腫性中耳炎という病気になってしまったんです。それが肉や骨を溶かしていくらしく、脳まで行ったらおしまいだと。病院に行ったときには、即手術。もう聴力を諦めるしかなかったんです。でもそのおかげで『耳で見る、目で聴く』という自分が出来上がって、芸事に役立ちました。片耳が聴こえないことで、想像力が広がったんです。目を閉じた時に、人が歩く気配が砂利道なのか、フローリングなのか。女性なのか、男性なのか、子どもなのか、お年寄りなのかと想像できるようになりました」
そういう観察眼と想像力は、ものまねだけではなく、俳優として演技をするときにも生きている。
「たとえば振り向き方ひとつとっても、喜劇にするのかしないのか、やり方があります。
人の話を聞く姿勢にしても、いつも逆を向いていて『人の話を聞かないタイプ』を表現したり。それをずっとやっていて『この人はそういう人なんだな』と思わせておいて、4回目に向き合ったりすると、お客がそこでどっとウケたり。細かいことだけれど、そういうところをちゃんとやっていきたいんですよね」。

1月10日からの明治座で、松平健さんと共演するのも楽しみだ。
松平さんとの舞台での共演は3度目。
「松平健さんとコロッケ、って、どこも結びつかないからいいんじゃないでしょうか。松平さんのモノマネをしているわけでもないですしね。僕は松平さんのことを最後の時代劇スターだと思っています。すごく生真面目な方なんですが、最近、ちょっと、ものまねをしたり、ロボットの動きをやってみたりされるんですよ。密かに練習されたのかな」
それはひょっとすると、コロッケさんの影響かもしれない。
コロッケさんが『暴れん坊将軍』で演じるのは、梵天小僧としてかつて江戸を騒がせた元盗賊。
「いわゆる、ねずみ小僧です。悪いやつからお金を盗んで、貧しい人に分け与えるという義賊だった男です。今は盗賊稼業から足を洗って半次郎と名乗って傘屋を営んでいます」
ショータイムもたっぷりある。
「45周年の集大成なので、決められた時間の中でどれだけ早替えできるか、と思っています。あとはアコースティックコーナーがあって、ギターと僕だけで、お客さんとのやり取りで内容を変えていこうと思っています」
フィナーレは「マツケンサンバⅡ」。コロッケさんもどう絡むのか、それも見てのお楽しみだ。
