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    第273回:ドリアン・ロロブリジーダさん(俳優、ドラァグクィーン)

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《2》ホールを借り切って、母に捧げたバラード

 大学時代にドラァグクィーンを始めていたというドリアンさん。家の中にドレスが増えていくのをお母様は見ておられたという。

「ドレスを洗濯して干しておいたりもするでしょう。母に『なにこれ』と聞かれて『ミュージカルサークルの衣装担当をやっているんだ』と言い訳しました。でも全部自分サイズで巨大なドレスしかないから(笑)、わかっていたかもしれません。母もクラシックの声楽をやっていた人で、キラキラしたものが好きだった。でも自分についてどう思っていたのか、もう確かめようがないんですよね」

 お母様は2015年に病気で他界。亡くなるとわかったとき、ドリアンさんはお母様のためだけのコンサートを企画した。

「2015年の7月に、地元のホールを借りて『母に捧げるバラード』というコンサートをしました。お客さんは家族だけ。『ふたりのビッグショー』という友人とのデュオでKiroroの『未来へ』や、Superflyの『愛を込めて花束を』、サザンオールスターズの『心を込めて花束を』という結婚式の定番ソングもうたいました。喜んでくれましたよ。母からもらった“歌”で少しでも恩返しができて本当によかったと思いました」

 結局、お母様にカミングアウトすることはなかったのだそうだ。

「ちゃんと言えずじまいだったんです。ただ、多分気づいていたと思います。ちょっとこの子は一般とは違うぞというのが伝わっていたと思うし、セクシュアリティのことは言わなかったけれど、それ以外のことはよくコミュニケーションをとっていましたから」

 最愛の息子が幸せであることを、お母様は一番だと思っておられたのではないだろうか。

ドリアン・ロロブリジーダさん

《3》香りのメーカーのプレス経験も

 繊細な感受性を持つドリアンさんは、社会人になって香りの会社で活躍していた。

「社会人としての最初の8年間は香水化粧品メーカーにいました。その後の2年間もホームフレグランスの会社でプレスをやっていたんです」

 香りには自ずと詳しくなる環境。自身でもいろいろと使ってきたそう。

「歳を重ねてきたので、シダーとかムスク系を使いこなしたいとは思っています。流行とともに石けん系、アクア系といろいろ使ってきました。最初はエンジェルハートなどから始まって、ブルガリ・プールオムを使ったり。あ、初恋の人が使っていた香りで、あの香りを嗅ぐと思い出しますね。プルースト現象ね」

 プルースト現象は、何かの香りが記憶を呼び起こすという現象。もう一つ、クリスチャン・ディオールのDUNEを嗅ぐと、思い出す人が。

「母はずっとDUNEをつけていたんです。だから今もその香りを嗅ぐと思い出しますね」

 その香りを嗅ぐとその人を思い出すというのは万人に共通するもの。香りは記憶のなかで、唯一無二のアイデンティティにもなりうるのかもしれない。

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