板の上に黒い塗料を塗り、そこにチョークで描く。一言でそうは言っても、画家によって画風は様々。Moecoさんの描く絵は、艶めかしさにあふれています。アイドルから女優、画家へと大きな転身を果たして現在は世界的に活動する彼女に、チョークアートへの熱い想いを語っていただきます。
Moecoさんは、少し古い言葉で言えば絶世の美女。黒髪と大きな瞳が印象的です。実はもともと、アイドル松下萌子として18歳でデビューしたことがあります。
「14歳のとき、事務所のオーディションに受かって、中学卒業と同時に神戸市から上京してきました。こちらの高校に通い始めたのです。自分にとってはそれがとても自然なことで、寂しかったという記憶はありません。若かったというか、子どもだったから、怖いもの知らずだったのですね(笑)」
20歳を境に女優としても活動するようになり、舞台に出演したりしていましたが、あるとき、テレビで見たチョークアートに衝撃を受けました。
「小さい頃から絵が好きで、テレビの番組などでも絵を描かせてもらったりしたこともありましたが、歳を重ねてちゃんと描く機会もなかった。そんなときチョークアートを見て、すぐに「習いたい!」と思ったのです」
Moecoさんは、そうと決めたら即、行動に移すタイプ。教室を調べたり、好きなタッチで描く先生を探したりし始めました。
「見つけた教室には基礎コースとプロフェッショナルコースがあって、私はいきなりプロフェッショナルコースを選びました。先生は基礎をやってからのほうがいいのでは、とおっしゃったのですが」
それが8年前のこと。ニューヨークやオーストラリアにも留学することになりますが、習いたての頃に描いた絵のこんなエピソードが。
「教室に通い始めた頃に、フルーツの絵を描いて『すごいのが描けた』と思ってしばらく飾っていたのです。それがいつしか箪笥と壁の隙間に落ちてしまって、取るのも大変だし、そのままになっていたのですね。何年かして、引越しのときに拾い上げたら、めっちゃ下手くそで(笑)、捨てちゃった。今思えば残しておいてもよかったなあとは思うのですが」。