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- スペシャルインタビュー「今、かぐわしき人々」
- 第31回：Moecoさん（松下萌子さん）（画家）
《２》
去年の1月には初の個展を開催しました。タイトルは「艶画」。
「日本に昔からあった『春画』は、『艶画』とも言うらしいので、目指すのはエロティシズムです。全部描き下ろしで20枚、展示しました。大きいのは幅が2メートルくらいあるものでしたから、結構な量でしたね」
彼女が「艶画」を描くインスピレーションを得たのは、2012年のNY留学で見た絵がきっかけでした。
「あるブラックのアーティストで、女性ばかり描く人がいて。女性の陰部にラインストーンをちりばめた絵を見てなんてかっこいいんだ、と思ったのです。ブラックの人たちの歴史と文化のなかで、女性性には深いリスペクトがあるのでしょう。それを見て、私はまた自分のもつ文化を振り返って、エロスを考えるようになりました。日本人はそのものずばりよりも、連想できることにエロスを感じる。だから、このバラの絵のようなものを描くのです。これは横から見ていますが、上から見た絵もあります」
チョークアートが一般的な絵と異なるのは、指で描いていくこと。
「指で描くから、人の体温が絵になるようなところがあります。暑い日と寒い日でも違うし。冷え性の人か手が熱い人かでも違う。だから、魂がこもるのかも」
ちなみにMoecoさんは、赤ちゃんのように手が熱いのだそう。
「もともとチョークアートは看板のものなので、陰影を大胆に入れます。白の上に描くのではなく、黒の上に描くという真逆な発想も面白い。だから、美のなかにある毒々しさを見せられる。きれいなものにこそ毒々しさがある。黒に描くから、それが伝わりやすいのではないでしょうか」。
《３》
アトリエは真っ白な空間。そして、棚のなかには香水瓶がぎっしり並んでいました。
「香りは大好きで、ディフューザーやルームフレグランスは海外で大量に買ってきます。イランイラン、ローズ、ジャスミン、ネロリなど、花の香りを選ぶことが多いです」
MoecoさんはNYに留学中、出会う人たちが香りをとても大切にしていることに気づきました。
「滞在し始めた頃、友達の友達のパーティーで、ヨーロッパ系の金髪の女の子がいて、すごくいい香りをつけていたのです。いい匂いですね、と言ったら『ジューシークチュールの香水よ』と教えてくれたのですが、自分も真似して買ってつけてみたら、くらくらして酔うくらいきつい香りで（笑）。香りはその人のもっているものと混じり合ってできるものなのだなと思いました。たまにその香りをかぐと、少し気持ちが上がりますが、やっぱり私にはきつすぎます」
海外で、香りからも日本人であることを考えさせられたというMoecoさん。これまでの作品はその部分を大事にしてきましたが、これからは少し考えを変えようという思いも出てきました。
「日本人だとか何人だからということを一旦捨てて、がっつり人間としてのエロスに向き合って描こうと思っているのです。オーダーをこなしていくだけでは、自分の作品は描けません。早く動き出さないと時間がないから」
アーティストとして、自分の奥にあるものと対峙しようとしている彼女の強い表情が、その場にあふれる優しい花の香りと、また蠱惑的なギャップを醸し出していました。
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Moecoさんの展示の予定
10月12-14 マレーシア
art expo MALAYSIA アートフェア出展
11月15-18 韓国
ART Gwangju2018アートフェア出展
11月22-28 韓国
ART ASIA 2018 アートフェア出展
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』（スター出版）。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』（マガジンハウス）など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1
撮影 ヒダキトモコ
https://hidaki.weebly.com/
