デビューして40年。成熟を極めたソウルフルな歌声で、今も多くのファンをもつ滝ともはるさん。横浜に根を下ろし、パラダイスカフェというライブハウスも経営する所以で、多くのミュージシャンからの信頼も厚い人。ホームタウンの馬車道で、来し方と、今思うことを伺いました。
滝ともはるさんの故郷は大分県中津市。そして、実はお父様は歌手だったのだそう。
「まだ小学生の頃、土曜の夜市に幼なじみののりさんと出かけ、帰りに彼の父上が経営するクラブに立ち寄ったのです。バーテンさんがコーラを出してくれて、その喉にがつんとくる炭酸と不思議な清涼感に、大人の世界の入り口を感じました。しばらくしたら、店の奥から歌声が聴こえてきました。覗いてみると、お客とホステスの前で父が歌っていました。自らギターを弾いて、歌謡曲を歌っていたのです」
子どもながらに大人たちの遊び場にいるという少しの罪悪感と、戸惑い。でも滝少年はその姿に釘付けになりました。
「家では無口で厳しい父が、優しい笑顔で歌っていました。ソフトな高音が耳に心地よかった。私はそれに憧れ、やがて歌手になろうと決意したのです。デビュー前に父はふと、こうつぶやきました。『カエルの子はカエルだな』。」
上京し、23歳でデビュー。1980年には、堀内孝雄さんとデュエットした『南回帰線』が大ヒット。歌番組華やかなりし時代、今もネット上の動画で、フジテレビの『夜のヒットスタジオ』に出演した姿などが見られます。
「あの頃の自分にはまったく自信がないな。…どの歌手もファンの人たちが入り待ちとか出待ちしているのに、自分には一人もいなかったですからねえ。一人も、ですよ!(笑)」。