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今かぐわしき人々 第54回
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    第54回:結城貴史さん

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役者として映画やテレビドラマに出演しつつ、自ら映像制作会社KURUWAを主宰し、プロデューサーとしても活躍する結城貴史さん。世界を視野に入れたその多くの映像活動は異彩を放ちつつ、アーティストのこれからのあり方を感じさせてくれます。
単館上映ながら東京、大阪、名古屋とロング・ヒットを続ける映画『藍色少年少女』を話のきっかけに、結城さんがこれから挑む作品についても語ってくださいました。

《1》

映画『藍色少年少女』は6年前に撮影された作品。東京・吉祥寺UPLINKでは、1週間の予定が3週間のロングランになり、口コミで感動が伝わっていきました。
  物語は、外で遊ぶことを抑制されている福島の子どもたちを夏休みに受け入れている町、ふじのに暮らす少年・テツオと、そこへ去年と同じようにやってきたシチカという少女のひと夏の成長が描かれていきます。
結城貴史さんはこの映画のプロデューサーであり、主人公・テツオの父親役を演じています。

「脚本も担当してれた倉田健次監督が『10年残る映画にしましょう』と言ってくれたのですが、まさにそうなりつつあります。実は出来上がった当初は『福島以外の場所への移住をすすめる映画なのか』というようなバッシングもありました。
でもそのときに意見を闘わせた方たちも今回、映画を観に来てくれて、やっと冷静に観られるようになった、と」

 ふじのは、神奈川県相模原市に実在する藤野市のこと。芸術家が自然とともにたくさん暮らしているこの町で、映画を撮ることになったのは「ふじのキッズシアター」という子どもたちのワークショップをサポートしている、女優・柳田ありすさんのひとことがきっかけでした。

「僕が映像会社KURUWAを立ち上げた頃、沖縄の今帰仁村で作った映画があって、それが立川シネマで公開されたとき、柳田さんが来てくださって。『演劇を通じて子どもたちの心と体を解放することをやっていて、福島の子どもたちの保養活動もしている。お金はないけれど、映画にしたい』とおっしゃったのです。『お金はないけれど』と言われるとなんとかしたくなって(笑)、すぐに藤野へ行きました」

ふじのキッズシアターの子どもたちは、全員がプロを目指しているというわけではありません。のびのびと育つ少年少女の姿に、結城さんは倉田監督の手腕を思い出しました。

「倉田さんは世界のショート・フィルムフェスティバルで多くの賞を受賞している実力派。以前、その彼が『リトルウィング』という空手少年の映画を撮っていて、そのときに本当に子どもの目線に立って、気持ちがわかる人だなあと思ったので、倉田さんしかいないなと。5月に倉田さんを連れていき、7月頭には本ができて、子どもたちの夏休みが始まる下旬から撮影が始まりました」

驚いたことに、長期の撮影で一番予算のとられる賄いは、子役の母親たちが作ってくれたのだそうです。

「それがまた美味くて! 本当にありがたかったです。しかも、お母さんたちは、子どものテンションが下がったときにどう対処するかもわかっている名マネージャーでもあるのです」

藤野の人たちは、協力を惜しみませんでした。

「宿泊も、自給自足している人たちの日本家屋に無償で泊めてもらったりしました。どこに車を停めればいいとか、そんなことも本当にちゃんと仕切ってもらえた。僕は役者も本業ですから、今まで多くの作品に出演した際に、最小限の人数で何ができるか、というのを見てきました。だから機動力のあるスタッフを最小限で選び動き回りました。町と一体になって作った映画なのです。だから、キャストのみんなも、藤野が大好きになりました」

 2017年、キネコ国際映画祭(ベルリン映画祭公認)で、ノミネート。そのとき見ていてくれた人が公開のオファーをくれたのでした。
筆者も作品を観ましたが、モノクロの世界のなかでいきいきと動く子役たち、やさしい大人たちの姿は、まるでドキュメンタリーに近い感動をくれました。忘れない、というよりは「忘れたくない」映画です。

《2》

結城さんは、役者でありつつ、映像制作にも力を注ぎ、会社をもっています。
でも意外なことに、最初に作った会社はビル清掃会社だったのだとか。

「まず、僕は映画が好きなんです。身銭を切って自主映画を作るほどに。でもいいものを作ろうとこだわるほどに、正直、食えないですよ。それで、当初は役者仲間たちとバイトをしていたのです。ビルの窓拭きでした。でもね、急にオーディションが入って当日、前日欠勤が何日も続くと、クビになっちゃうんです笑。それで、25歳のときに、じゃ、自分で会社組織を作ったらいいんじゃないかと。集合体になって、自分たちで仕切ればいいでしょう、と」

 人とコミュニケーションをとるのが上手な結城さんは、様々な現場でいろんなスタッフと知り合い、仲良くなっていきました。

「この人とこの人がいれば、仲良くなれるな。映画が作れるなと。ああ、こうすれば資金が集められる、と。キャスティングがわかると、お金の流れもわかりました。『うちなら映画みたいなミュージックビデオが作れますよ』と、ミュージックビデオを作り始めたら、依頼が殺到しました」

役者兼プロデューサー。なかには「もう役者としては本気ではないんだな」と言って離れる人もいたそうです。

「僕は海外でも仕事をしていたので、役者がセルフプロデュースするのは当然だというのはわかっていましたから。アメリカ、ヨーロッパ、フィリピン、韓国。海外での仕事も増えていきましたから、やれることをやっていこうと。来年の1月で会社も10年になります」

 結城さんは役者を中途半端にやっているわけではなく『藍色少年少女』の父親役では「柔らかいほうがいいだろう」と、10キロ太り、その後、松田優作賞受賞作品『オボの声』では12キロ痩せて役に臨みました。

結城貴史さん

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