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今かぐわしき人々 第58回:倉田健次さん(映画監督)
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    第58回:倉田健次さん(映画監督)

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アメリカ、オランダ、スウェーデン、韓国…。世界中のショート・フィルムフェスティバルでグランプリ受賞を続けている映画『NOVERA PICARESCA』(ノヴェラ・ピカレスカ)。その監督&脚本を手がけられたのが、気鋭の映画監督、倉田健次さん。結城貴史さんのスペシャルインタビューでも話題にのぼった長編映画『藍色少年少女』の監督でもあります。
 倉田さんがドラマや映画を作るようになったこれまでの経緯、そして描きたい世界について、伺いました。

《1》

そもそも「映画監督」というのは不思議な職業です。資格も試験もありません。いったいどうやって人は「映画監督」になるのか。その疑問をぶつけてみると、倉田健次さんは困った顔をしました。

「方法論は無いように思います。むしろ今も僕は自称・映画監督なのではないかと思ってしまうくらい。とにかく技術も必要な割には、教える場所も伝えられる技法も海外ほどは確立されていないように感じています。
僕は高校のとき、映画を作りたくなったので、東京の青山一丁目にあった専門学校へ入りました」

しかし黎明期の映像学校では思ったような授業はありませんでした。撮影するための機材は揃っていましたが、技術的なことはさほど教えてもらえなかったそうです。

「だから海外の人が書いた本を読むばかりでした。学校ではクリエイティブなことを教えてくれることはありませんでした。今は是枝裕和監督が早稲田理工学術院教授をされていたりしますから、ずいぶん、いい状況になりましたね。それに、インターネットなどから情報を得ることもできますから、撮れちゃいますよね」

助監督から監督になるという道筋も聞いたことはありますが、倉田さんはそうありたくはなかったと言います。

「人にもよりますが、僕の場合は、もし助監督を深くやっていたら、人のものを吸い込むだけで終わってしまった気がします。独学でも作家として学んだり作ったりしていきたかった。無意識でも作家性を人に委ねたくはなかったのです。学校で機材を借り、映画の作り方を身につけ、知り合いや先輩に口を聞いてもらって映画を作り続けた。それが今に至っています」

やがて2009年、「サンダンス・NHK国際映像作家賞」で『彼女のSpeed』がグランプリに。『EVERYTIME WE SAY GOODBYE』がSSFF&AISA2016年ジャパン部門オーディエンスアワードを受賞したのを皮切りに、世界のショートフィルムフェスティバルで入選が決まっていきました。今年11月には『Novela Picaresca』(ノヴェラ・ピカレスカ)が、ニューヨーク・ヨンカーズにて開催される7th Annual YoFiFest The Yonkers Film Festivalでオフィシャルセレクションとして上映されます。

《2》

『Novela Picaresca』は、直訳すれば「悪徳小説」。しかし美しい映像はふんわりとおかしみをたたえ、人生に行き詰った登場人物たちを描き、その姿は、むしろ見ている我々を救います。

「この映画は6年前に撮影した『藍色少年少女』と『EVERYTIME WE SAY GOODBYE』の流れから、いい作品をと女性プロデューサーが熱烈に依頼してくれたものでした。なんにも具体的なストーリーはなかったのですが『誰も傷つかないようなバスジャックものなんてどうでしょう』と言ってしまったことから『それでいきましょう』ということになってしまい、そこから大いに悩みました(笑)。それで今ある物語と、もっと小学校の教師が子どもたちを連れ去る重い物語の2パターン考えたのです。でも結局、善悪の話にふりきった、今の作品になりました」

物語は親に捨てられ、それでも一生懸命いい子に育ってきたヒロインが「悪い子になりたかった」と独白するシーンが印象的です。

「おかしみと哀しみの共存。ただ楽しいだけでもなく、ただ重いだけでもなく、誰が見ても楽しめるターゲットも国境もないものを作りたい。そして下品でなくて。でも、笑いって国ごとに違いますよね。だからヨーロッパで受けた笑いがアメリカでも受けた、っていうことはすごく嬉しいことなのです」。

倉田健次さん

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