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今かぐわしき人々 第67回
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    第67回:永崎ひまるさん(絵馬師)

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神社仏閣でたくさんの人が祈りを込める絵馬。そこに描かれる様々な絵を「誰が描いているのだろう」と思ったことはありませんか。
永崎ひまるさんは、宗像大社、神田明神、東京大神宮、霧島神宮など、全国の名だたる神社仏閣の絵馬の絵を描き、平成27年度の神道文化賞を受賞した絵馬師。なぜこの唯一無二の役目を引き受けるようになったのか、そして絵馬への思いを語っていただきましょう。

《1》ファッションをあきらめ、CGデザインの道へ

 きらきらした瞳と、周りをぱっと明るくするような存在感がある、普段の永崎ひまるさん。しかしいわゆる「スピリチュアル系」な人ではなく、ひとつずつ描く仕事をしてきたといいます。
 もともと大学時代は、服飾デザインを勉強していました。
「デザインでは学内の賞をもらったりしていたのですが、私はお裁縫が苦手(笑)。やはり服を作るには両方できたほうがいい。だから、服飾関係は無理だなと思っていました。それで設計事務所へ就職したら、いきなり経理に回されたのです。でも、就職氷河期の割には、報酬はよかった。だったら、社会人として働き、お金を貯めて、デザインの勉強をしようと決めたのです」
 永崎さんは、ある日、雑誌でデジタルハリウッド大学の広告を見つけ、CGの勉強をしようと決めたのでした。
「これだ! と思いました。CGデザインはまだ黎明期だったので、習得しておけば、絶対にトップランナーに仲間入りできると。そこで、イラストレーターとかPhotoshopの使い方など半年間、徹底的に学びました」
 その後、勉強の甲斐あって、CGデザイナーとしての仕事が始まりました。縁あってお守りやおみくじ、絵馬のデザインを請け負うようになったのです。

永崎ひまるさん

《2》大絵馬の模写でかつてない達成感が

「最初は大変でした。ボツも多かったです。40件出して全部ボツとか」
 しかし18年前、20代も終わろうとした頃に、大きな仕事がやってきました。
「京都の北野天満宮の大絵馬を依頼されたのです。しかしそれは、97歳の有名な画家の手のひらサイズの絵を模写して、1メートルくらいの大絵馬に仕上げるという仕事でした。当初、私はデザイナーとして携わりましたから、これは看板屋さんに描いてもらうのがいいとお願いしたら、全然違うものが上がってきてしまって。驚いて、自分でやり直すことにしました」
 永崎さんが気づいたのは、その絵の色の絶妙さでした。特殊な絵の具で、色数が少なく、色を混ぜて作らなくてはいけなかったのです。
「ひとつひとつ丁寧に色出しをしていたら、自分でもびっくりするくらい、そっくりなものができました。そのとき、それまでの自分が感じたことのなかった達成感を感じることができたのです。それまでは自分は画家ではないと気後れしていたのですが、いや、絵馬が描けた、という強い達成感が自分に刻まれたのです」
 さらに、その大絵馬の前で幸せそうに写真を撮る人々の姿を見て「絵馬っていいな」という思いが募っていきました。
「そこから、絵馬を描くということに自分のなかで強いモチベーションが生まれていきました。絵馬は自分に自信をくれたものでもある。いつか、神社やお寺にこの恩返しをしたいと」
 しかし、永崎さんはその後、陶器や文具のデザイン、出版デザインの仕事も忙しくなり、絵馬の世界を一旦離れた時期がありました。フランスの三ツ星シェフ、アラン・デュカスと本をつくって2014グルマン世界料理本大賞イラストレーション部門1位を受賞したこともあります。
 ところが「神社の本を出版しませんか」という話があり、いろんな神社を取材するという仕事がやってきました。
「神社の取材の最初が甲斐国一宮浅間神社でした。そこでまた、神社とのご縁が紡がれたのです。いろんなもののデザインや作画を経て、人生経験を積んで、やっと絵馬を描けるようになったのかもしれません」
 絵馬作家は画家と違い、その神社によって画風を変えていく必要があるのでした。
「私自身のオリジナルの絵は個性が強いです。でも、その個性をおさえて、神社に合わせていくのが絵馬師の仕事であると思うのです。取材をさせてもらい、何が失礼か、何が喜んでもらえるのか、そういうことを聞くことができたのも幸せなことでした」
 こうして永崎さんは、神社に奉納される大絵馬から私たちが買うことのできる小さな絵馬まで、何千という絵を描いてきました。
 そして平成27年度の神道文化賞を受賞するまでに至ったのです。

永崎ひまるさん

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