甲斐国一宮浅間神社。東京大神宮、神田明神。そして、今年は盃の絵を描いた乃木神社。名だたる神社の大絵馬や絵馬の絵を描き続ける永崎さんは、神社や寺をとても大事に思っています。
「1000年の歴史が当たり前のようにある。それが日本人らしさだと思います。お祭りが減ってきたりしているのはとても寂しいですね。自分が住んでいる場所の氏神様を大事にしたほうがいいです。そして生まれた場所の氏神様は産土(うぶすな)様といって、一生を守ってくれる神社ですから、ぜひお参りしてください。心の強さが変わってきます」
御朱印を集めたり、願い事の種類で違う神社に行くのも悪いことではありませんが、地元を大事にする気持ちをまずもちたいものです。
「どこの神社にも、自然の木の香りが漂っていますよね。御神木、神饌、御神酒。自然に湧き上がるような香りがそこにあります。背筋がすっと伸びるような」
絵馬の素材は檜が多いそう。永崎さんは、その檜の香りに囲まれています。
「今は、300~400年ものの木曽檜を使わせてもらっています。切りたての檜の香りは本当に清々しくてよいものです。伊勢神宮は100%檜でできています。高貴な木なのですね」
もうひとつ、永崎さんは鼻で感じるのではない「香り」というものが
人にはあるのではないかと指摘します。
「見えないものの香り。たとえば人柄は香りに出ると思うのです。それは鼻で感じるのではなく、別のセンサーがあるような気がするのです。すごく美人そうな人でも香りを感じない人もいます。音にも、耳では聴き取れない超音波みたいな音があるじゃないですか。香りにもそういうものがあるのではないでしょうか」
鼻では感じることができない、香り。それを嗅ぎ取ることができる人は稀なのかもしれませんが、確かに、ありそうです。
撮影協力
乃木神社
乃木神社は、東京都港区赤坂八丁目にある神社。乃木希典将軍と乃木静子夫人を祀る。
〒107-0052 東京都港区赤坂8丁目11−27
地下鉄千代田線乃木坂駅1番出口すぐ。
取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
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撮影 上平庸文