一流企業の会社員生活を辞め、ギャグ漫画家としてデビュー。オールジャンルの漫画からエッセイ、小説と活躍の場を広げ、現在は毎日新聞の4コマ漫画を日々連載するいしかわじゅんさん。
これまでのまるで旅をするような職歴と、沖縄と東京を月のうち半分ずつ行き来する独自のライフスタイルについて、愉快に語っていただきました。
インタビュー場所に指定されたのは、吉祥寺にある不思議なカフェ。基本的には雑貨屋というか、倉庫のような場所で、古道具のような商品群をかきわけて、奥にある小さなカフェスペースにたどり着きました。そこは、いしかわじゅんさんが漫画のネームを書くためのスペースのひとつのよう。
「今は毎日の連載だからね。描いても描いても追いつかない」
毎日新聞の朝刊に連載中の4コマ漫画『桜田です!』を描きつつ、エッセイの執筆や仲間との展覧会など、休む間もなく描き続けるいしかわさんは、飄々淡々とした風情。卓越したプロフェッショナルというのは、過度に楽しそうでも苦しそうでもないものです。
愛知県出身のいしかわじゅんさんは、大学時代を東京で過ごしました。そこで漫画研究会に所属していました。
「先輩には後に『沈黙の艦隊』を描くかわぐちかいじがいて、手伝いに行ったりしていたので、なんとなく漫画の描き方は覚えたんだけど、当時は自分が漫画家になるとは思わなかったね」
その言葉通り、いしかわさんは大学卒業後、地元の大手自動車メーカーに就職。
「生産管理部輸送管理課というところに配属されてね。要するに、いろんな工場で作っている部品を輸送する詳細なダイヤを管理するところだね。すごく安定したいい仕事だけど、まあ、向いてなくてね。1年もたなかったなあ。サラリーマンは辞めよう。それが、人生で僕がした唯一の大決断だったな」
自ら版元に漫画を持ち込み、ギャグ漫画家としてデビューしました。
「デビューしたときは4ページのギャグ漫画。そこから16ページやるようになって、少年漫画、劇画、少女漫画、レディースコミック、新聞と、オールジャンルの漫画をやってきているよね。それはわりと珍しいことなのです。活字は全部好きで、読むのが好き。それでそのなかの漫画というジャンルが好きだったんだろうね。漫画ならなんでもいいやって」
しかし漫画人生が始まると同時に、文章だけを書く仕事も依頼されるようになったのです。