「宝塚歌劇殿堂入りの100人」の一人であり、今年、芸能生活55周年を迎えた安奈淳さん。1975年、彼女が演じた『ベルサイユのばら』のオスカル役は、当時、宝塚歌劇を知らなかった人にも大きな感銘を与え、再演を重ねる大ヒットとなりました。退団後もミュージカルや映像で活躍し続ける安奈さん。歌への想いは強く研ぎ澄まされてゆくばかりです。
スレンダーでクールなスタイルに柔らかなグレーヘア。センスのある黒の装いは、普段着もおしゃれでドラマティック。安奈さんの心根にあるやさしさも感じさせます。
宝塚音楽学校に入ったのは、両親が音楽や舞台が大好きだったということにも影響されたようです。
「父はジャズが大好きでしたね。幼い頃から、我が家ではEPレコードやLPレコードがかかっていました。ドリス・デイ、ジュリー・ロンドン、レナ・ホーン。当時の人気歌手は歌手であり、女優もしていましたね」
だから当時のジャズ歌手の言葉はセリフのように胸に届くのかも。それは安奈さんに共通するものでもあります。
実際に、ホールでのコンサートも聴きにいったそう。
「ナットキングコールが来日したときも、大阪のフェスティバルホールに親と行きました。中一のときは、プラターズにはまって、連れていってもらえたのが嬉しかった。実は開演前にお手洗いへ行こうとロビーを歩いていたら、スカウトされて、舞台で花束贈呈役をさせてもらったのですよ」
きっと美しい少女だったのでしょう。やがて彼女は宝塚歌劇のトップスターとなるのですから。
もちろん、宝塚歌劇も見に行っていました。
「スターの方達が銀橋を通るとき、お化粧の香りが、ふわりふわりとしてくるのです。家族で宝塚を見るのが一大イベントでした。その幸せとともに、あの香りを思い出します」。