激しく踊るように弾くこともあれば、静かにそこに根を下ろしたかのように弾くこともある。演奏の美しさはもちろんのこと、川井郁子さんがヴァイオリンを弾く姿は、見ていても美しい。デビューから20周年、ひらめきに彩られたその華やかな足跡と、表現し続けることへの強い思いを話していただきました。
最近では、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』のエンディング「麒麟がくる紀行」に流れる音楽も担当されています。
デビューから20周年。ヴァイオリニストとしても作曲家としても活躍し続ける川井郁子さんが、初めてその楽器を手にしたのは6歳のとき。
「母と洗濯物をたたんでいた時、ラジオからヴァイオリンの音色が聴こえてきたのです。女性的ではない、雄大で大陸的な音を奏でる曲でした。今でもそういう音色に惹かれるのですが。後になってアイザック・スターンの演奏するブルッフの『ヴァイオリン協奏曲』だと知りました」
ウクライナ出身の名演奏家、アイザック・スターンは、中国政府にも招かれてヴァイオリニストの育成にも携わった人。本物の奏でる渋い音に6歳で反応した川井さんは、まさしく才能を秘めた子どもだったのでしょう。
「4歳から近所のオルガン教室に通ったりはしていましたが、その時から、とにかくヴァイオリンを弾きたいと言い続けて、半年後に買ってもらいました。今のようにインターネットもなく、香川県の小さな街で身近に演奏している人もいなかったので、それがどんなに大変なことなのか、知る由もなかったのです」
しかし親御さんは、この美しい才能あふれる少女によくぞヴァイオリンを与えたものです。
彼女はやがて全国から我こそはという奏者の集まる東京藝術大学へ。そして型をきっちり学んだ上で、そこを飛び出していきました。
「オリジナリティを出したい。ピアソラみたいなアーティストになりたいと、思うようになっていきました。今、20周年を迎えて自分の音楽とはどういうものなのかと考えた時、そうやってジャンルを越境しながら作ってきたことは大きいと思いますね」