女優、小説や脚本を執筆する作家、コメンテーター。そして歌手。多才な活動で自身の世界を大きく着実に広げてきた中江有里さん。今回は、久しぶりに発表したニューアルバム『Port de voix』に寄せる想いを語っていただきます。
女優として活動し始めて数年経った’91年10月。『花をください』でCDデビューをした中江有里さんは、四半世紀、歌から遠のいていました。
再び歌うきっかけとなったのは、その頃、歌詞を書いてもらっていた作詞家の松井五郎さんと再会したこと。
「2017年に、代官山で松井五郎さんが売野雅勇さんとトークショーをされるというので一観客として聴きに行ったのです。それで、ここまで来たのだから、直接ご挨拶をしようと思って、ご著書を買ってサイン会の列に並んでみたのです。その後、松井さんのプロデュースされるライブを聴きに行ったり、自著の小説を送ったりという交流が続いていました」
その中江さんの小説に、松井さんは詩で感想を書いてくださったのだそうです。
「うれしかったです。そんな形で感想をもらったのは初めてですし。それで、次の小説を出すときに、発売前に読んでいただいて詩を書いてもらい、帯にさせてもらったのです。松井さんから『もう歌はやらないのですか』と聞かれ、全然考えていなかったのですが、その後いただいた詩に曲がついて返ってきました。オリジナル曲ですから、これはもう歌わないわけにはいかないだろうと。松井さんのトークショーで20数年ぶりに歌うことに。歌の再開にはそんないきさつがありました」
2020年2月には渋谷・JZ Bratでライブを。CD制作の話も現実化していきました。
「松井さんのプロデュースで、選曲もしていただきました。玉置浩二さんやチャゲさんが歌われている曲を提案され、男性ボーカルの曲を歌うのは初めての挑戦でしたが『中江さんの声で聴かせてください』とおっしゃってくださり、じゃあ歌ってみようかと背中を押していただきました」
導かれるようにまた歌の道を歩き始めた中江さん。しかしその一方で、彼女のプライベートでは、お母様との今生の別れを惜しむ時間が流れていたのです。