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今かぐわしき人々 第97回
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    第97回:伊藤仁美さん(着物家)

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 京都の禅寺、お香の漂う環境で生まれた伊藤仁美さんは、着物の着付けから着物にまつわる商品開発まで、広く深く日本の着物文化を伝える人。しかし学生時代はアスリートで、その後西洋骨董にも惹かれたことがあるとか。彼女がどうやって和の「着物」への愛に目覚めたのか、そしてその仕事の生きがいについて、語っていただきました。

《1》削ぎ落とされた和の美に出会い直すまで

 ほっそりと美しい襟足に小股の切れ上がった立ち姿。まさに着物を着るために出来上がったような美しさ。伊藤仁美さんに漂う気配は、一朝一夕に作られたものではないでしょう。

「京都の建仁寺頭塔両足院という家の長女として生まれました。確かに朝はお香の香りとお勤めの声がそばにありました。でも子どもの頃の私は反発していて。中学は水泳、高校は陸上と部活にのめり込むスポーツ少女だったのです。高校時代は京都で毎年総合優勝するようなチームだったのです。ただ私は高校生になってから走り始めたので、基礎力が伴っていない。それで、顧問の先生に『走って通っていいですか』と申し出ました。髪の毛も空気抵抗を小さくするために角刈りみたいにしていて(笑)。いつも日焼けして真っ黒。とにかく1秒でも早く走ることしか考えていませんでした」

伊藤仁美さん

 伊藤さんの通っていた学校は女子校でしたが、高3になると、周囲で異変が。

「周囲の友達が彼氏が欲しいと言い出したんです。私は恋愛にも興味が持てなくて、その後、共学の大学に進みましたが、そこでも何をしていいのかわかりませんでした。バイトも3日でやめちゃうし。就職活動は最悪で、みんな同じスーツを着ないといけないなんて、私には向いていないと思って辞めました」

 一人でふらふらと彷徨うように歩いていた伊藤さん。ふと通りかかったのが、西洋骨董のお店でした。

「ヨーロッパのアンティークを見ているうち、私は古いものや職人の手になるものが好きなんだな、とわかりました。その後、そのお店が新しい店を作るとき、品揃えも考え、店長までやらせてもらって5年勤めました」

 古く愛されてきたもの、真面目な職人たちが丹精込めた品物。それらに囲まれることを楽しみながらも、伊藤さんの気持ちには何かしっくりこない引っ掛かりがあったようです。
 やがて彼女の本心を包む殻がぱーんと弾ける瞬間がやってきます。

「20代後半、祖父の法要があったのです。それはそれは荘厳で美しい風景でした。僧侶たちの袈裟の色、衣摺れの音、お香の香り。そして和装を身につけた人の所作の美しさ。こんなに美しいものがそばにあったなんて」

 削ぎ落とされた和の美。もし、これを身につけられたら。伊藤さんの胸は高鳴りました。

伊藤仁美さん

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