1. HOME
  2. 連載長編小説『4 LOVE NOTES』
  3. 第20話 『麻貴の挑戦』
    1. 特集
  • 連載長編小説『4 LOVE NOTES』
    第20話 『麻貴の挑戦』

《3》

多美子からのメールが届き、リンク先に飛ぶと、そこにコンテストの詳細が書かれていた。特にそれをとったからと言って、ものすごい賞品があるわけでもなさそうだった。

「なんだ、パリ研修に行けるとかじゃないんだ」

麻貴は欲深なことを考えていた自分が可笑しくなって、ちょっと微笑んだ。そして、決めた。
 そうだ。
 未知ちゃんをイメージして、本気で作品を作ってみよう。

未知は小柄で、痩せ型。どんなドレスを着るつもりだろう。いくら素敵なブーケを考えても、ドレスに似合わなければ元も子もない。

麻貴は思いきって、未知に電話してみた。

「未知ちゃん、どんなウェディングドレスを着るの」

「それが…」

未知は案の定、迷いに迷っていた。データを集めすぎてよくわからなくなる癖は、ここでも生きているようだった。

「明日、最終的に決めないといけないんです。最終的にお店は絞り込んだんですけれど。麻貴さん、一緒に見に行ってもらえませんか。希望(のぞみ)さんは、任せる、って」

「いいよ」

翌日、二人は渋谷で待ち合わせ、レンタルドレス屋にいた。

「うーん…」

ネットの写真ではそれなりに綺麗に見えたが、廉価を売り物にしているその店のドレスは、実際、少しくたびれていた。結婚式を前に瞳も肌もきらきらと輝いている未知にはそぐわない、と麻貴は思った。それに、そこにあるドレスでブーケのイメージもわかなかった。

「どう…ですか」

未知は麻貴を不安げに見つめた。

「「ちょっと、出ようか」

二人は連れ立って店を出た。麻貴は昔から知り合いのオーダーメイドのドレスを作る女性に電話した。

「未知ちゃん、今から横浜行ってもいいかな」

「え。あ、ああ、いいですけど」

電車のなかで、二人はドレスのことばかり話した。

「未知ちゃんさ、あの店のドレス、よくないと思わなかった?」

「思ったんですけど、なんかあんまり高いものを言うのも悪いのかなと思ったりして。それに… 希望さんが作ってくれる靴を履けたら、ドレスは別になんでもいいかなと思って」

「それ! それ大事じゃん。どんな靴?形はもう決まってるの?」

未知はスマホのアルバムから、ミルク色の革に小さなブルーのリボンがついた、丸っこい白い靴の絵を出した。

「可愛い〜。なんでこれを先に見せてくれないの。ほら、ここから発想しないとさ」

麻貴の頭のなかにも、その靴から連想できるブーケのイメージがいくつか浮かんできた。

  1. 3/4

先週の人気記事

スペシャルムービー

最新記事

  • 温まりたいときには ― ジンジャー・パチュリ

    更新日:2019年10月31日

  • スペシャル・インタビュー 第59回 大西順子さん

    更新日:2019年10月30日

  •  もうすぐ「アロマの日」!

    更新日:2019年10月24日

  • スペシャル・インタビュー 第58回 倉田健次さん

    更新日:2019年10月16日

  • スペシャル・インタビュー 第57回 三遊亭小遊三さん

    更新日:2019年10月9日

  • 長編小説第22話

    更新日:2019年10月7日

  • 落ち込んでいるとき ― ティーツリー・ゼラニウム

    更新日:2019年10月3日

  • 長編小説第21話

    更新日:2019年10月01日

  • スペシャル・インタビュー 第16回 株式会社インアゴーラ

    更新日:2019年9月24日

  • 香りと記憶の関係-「プルースト効果」-

    更新日:2019年9月19日

  • スペシャル・インタビュー 第56回 山田たかおさん

    更新日:2019年9月12日

  • スペシャル・インタビュー 第49回 北原照久さん

    更新日:2019年9月11日

  • スペシャル・インタビュー 第54回結城貴史さん

    更新日:2019年9月04日

  • スペシャル・インタビュー 第53回山添まりさん

    更新日:2019年9月02日