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    第20話 『麻貴の挑戦』

《3》

多美子からのメールが届き、リンク先に飛ぶと、そこにコンテストの詳細が書かれていた。特にそれをとったからと言って、ものすごい賞品があるわけでもなさそうだった。

「なんだ、パリ研修に行けるとかじゃないんだ」

麻貴は欲深なことを考えていた自分が可笑しくなって、ちょっと微笑んだ。そして、決めた。
 そうだ。
 未知ちゃんをイメージして、本気で作品を作ってみよう。

未知は小柄で、痩せ型。どんなドレスを着るつもりだろう。いくら素敵なブーケを考えても、ドレスに似合わなければ元も子もない。

麻貴は思いきって、未知に電話してみた。

「未知ちゃん、どんなウェディングドレスを着るの」

「それが…」

未知は案の定、迷いに迷っていた。データを集めすぎてよくわからなくなる癖は、ここでも生きているようだった。

「明日、最終的に決めないといけないんです。最終的にお店は絞り込んだんですけれど。麻貴さん、一緒に見に行ってもらえませんか。希望(のぞみ)さんは、任せる、って」

「いいよ」

翌日、二人は渋谷で待ち合わせ、レンタルドレス屋にいた。

「うーん…」

ネットの写真ではそれなりに綺麗に見えたが、廉価を売り物にしているその店のドレスは、実際、少しくたびれていた。結婚式を前に瞳も肌もきらきらと輝いている未知にはそぐわない、と麻貴は思った。それに、そこにあるドレスでブーケのイメージもわかなかった。

「どう…ですか」

未知は麻貴を不安げに見つめた。

「「ちょっと、出ようか」

二人は連れ立って店を出た。麻貴は昔から知り合いのオーダーメイドのドレスを作る女性に電話した。

「未知ちゃん、今から横浜行ってもいいかな」

「え。あ、ああ、いいですけど」

電車のなかで、二人はドレスのことばかり話した。

「未知ちゃんさ、あの店のドレス、よくないと思わなかった?」

「思ったんですけど、なんかあんまり高いものを言うのも悪いのかなと思ったりして。それに… 希望さんが作ってくれる靴を履けたら、ドレスは別になんでもいいかなと思って」

「それ! それ大事じゃん。どんな靴?形はもう決まってるの?」

未知はスマホのアルバムから、ミルク色の革に小さなブルーのリボンがついた、丸っこい白い靴の絵を出した。

「可愛い〜。なんでこれを先に見せてくれないの。ほら、ここから発想しないとさ」

麻貴の頭のなかにも、その靴から連想できるブーケのイメージがいくつか浮かんできた。

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