《2》
翌朝はきれいに晴れた。ホテル内の吹き抜けのチャペルでキリスト教式に挙式し、そのまま披露宴に移ることになっていた。
両親はモーニングと留袖の着付けに行き、未知は花嫁の支度をする特別な部屋に案内される。ヘアとメイクをしてくれる色白の女性は、未知ぐらいの年齢に見えたが、とても落ち着いていてあたたかい雰囲気だった。
姑の公子から預かっていた心づけを未知が渡そうとすると「そんな花嫁さんが気遣われることはないですよ。今日はもう全部任せてください」と、微笑んだ。
よく磨かれた大きな鏡の前に、お皿に一口大のサンドイッチが用意されていた。
「花嫁さんはなかなか食べづらいことも多いですから、少し口に入れておいたほうが」
そんなやりとりをしていると、有紗が莉奈の手を引いてやってきた。莉奈は今日のブライドメイドだ。やや頰を紅潮させ、緊張しているようだった。
「おめでとうございます」
有紗が莉奈の頭を後ろからお辞儀するようにと添えながら、自分も頭を下げた。
「有紗さん、ありがとうございます。莉奈ちゃんもきれいにしてもらおうね」
「うん!」
いつになく大きな返事をした莉奈に、有紗は驚いて微笑んだ。今日のことを莉奈はずっと楽しみにしているようだった。育児放棄されていた神戸の家から、有紗のところへきて、新しいお母さんの子どもが生まれて。おそらく寂しい思いをしていたにちがいない彼女に、そんな幸せをくれたのが、知り合って2年ほどの年下の女友達だなんて。なんと不思議なことだろう、と、有紗は心を震わせていた。
莉奈の衣装は淡いブルーのフリルが重なったロングドレスだった。パフスリーブに、小さな濃いブルーのリボンがついている。
髪には花嫁と同じ、白いバラがあしらわれることになっている。
新郎新婦が挙式で退場するとき、披露宴で入場するとき、かごのなかの花びらをまきながら莉奈がついていくことになっている。大事なお役目なのだ。
その花をアレンジしてもってくる、フラワーアーティストもやってきた。