アイドルから料理研究家へと転身を遂げた宮前真樹さん。独身時代は猫や小型犬を飼っていましたが、結婚してまさかの大型犬と暮らすことに。小型犬にしか慣れていなかった真樹さんは、大型犬のエルマーと向き合い続けてようやく今、落ち着いたと微笑みます。エルマーのご飯を作り、飼い主の1人としてイヌに認識されるまでの時間は、ある種格闘の日々だった様子。真樹さんの作るご飯を食べ、浴槽をまたいで自分で入るほどお風呂好きにもなったエルマーとの今は、かけがえのない日々です。
そのあったかな物語を、語っていただきました。
もともとは猫派だったという宮前真樹さん。子どもの頃は、空き地に近所の野良猫を集めていたほどでした。
「近所の野良猫を可愛がったりしていました。イヌには積極的に関わろうとしたことはなかったのですが、中2のとき、父親が突然どこかから柴犬を連れてきたんです。ハナコ、と名付けたそのイヌは、私が16歳でアイドル・デビューしたときにはまだ家にいました。何かの雑誌のペット特集で取材を受け、イヌが可愛いという話をしたら、ブリーダーをやっていたファンのかたが生まれて3ヶ月のマルチーズの赤ちゃんをうちまで持ってこられたんです」
今でこそアイドルの住所などプライバシーは厳密に守られていますが、ファンが来てしまうとは大変な時代です。
「学校の卒業アルバムに住所が載っていたりする時代だったので、それを見てファンの方が来られるんですね。いつも3〜4人、いらしてましたね。それで、イヌの赤ちゃんを持ってこられて、ちっちゃくて可愛いし、じゃ、飼うしかないな、と。そのコはサクラと名付けました。私は忙しくて家にあまりいないから、母や姉が可愛がってくれたんですけど。で、父の連れてきた柴犬と合わせて突然やってきたコが実家に2匹。その後、もともと猫が好きですから、20歳頃に1人暮らしを始めて、アメリカンショートヘアの仔猫を飼い始めました。そこへ保護猫の茶トラもやってきて、猫2匹とずっと住んでいました」
真樹さんは30歳で芸能界を引退。
「仕事を辞めて時間ができたので、イヌも飼えるだろうと。そのとき、スコティッシュフォールドという猫もいたのですが、ミニチュアダックスを飼い始めました。一人暮らしの家で4匹!」
ところがこのミニチュアダックス、おとなしいイヌだったようです。
「猫3匹に育てられたイヌという感じで、吠えたことがありませんでした。だから私、イヌってそんなものだと思っていたんですよ。そして大型犬を飼うなんてことは一生ないだろうと思っていました」。
まさかの大型犬との出会い。
それは、出張する友達のイヌを時々預かっていたことがきっかけでした。
「友達のイヌはイタリアングレイハウンドという犬種。そのコを預かっていて、トイレシートを買いにホームセンターに行っていたんですね。そのホームセンターにペットショップがあって覗いていたら、一番端っこのケージに見たこともないきれいなコがいたんです。シルバーっぽい毛並みにブルーの眼。ぬいぐるみみたいに可愛くて。犬種はワイマラナーと書いてありました」
ワイマラナーは狩猟犬で、大型犬。
「ネットで成犬になったときの画像を見てびっくりしました。いかつい! 今はこんなに可愛いのに、こうなるのか、と。運動量も食べる量もすごいんです」
でももともと、真樹さんのご主人であるフォトグラファーの萩庭桂太さんも大のイヌ好き、しかも大型犬好き。彼はゴールデンレトリバーと暮らしていた経験もありました。真樹さんは自分たちの年齢を考えると「飼いたいなら早いタイミングがいいかも」と思い始めました。
「保護犬のサイトを夜な夜な見ていましたが、ピンとくる出会いはありませんでした。私はやっぱり、あのワイマラナーの仔犬が忘れられない。理由をつけてホームセンターに何度も夫と行きました。でも夫は頑なに『柵の中から出すな』と言います。抱いちゃったらもうダメだと思っていたんですね。そのうち、ちょっとずつ大きくなっていって、セール価格になって。『飼い手がなかったらどうするんですか』と聞いたら、外に出せるようなペットショップへ行って、それでもダメならブリーダーに戻されるか、保護犬になるかだと。そんな話を聞きながら、夫が油断した隙に、はい、と仔犬を抱かせたんです。そうしたら、もう私よりメロメロになってしまい、飼うしかないと(笑)」
めでたくエルマーと命名され、飼い始めることに。しかし問題は、ワイマラナーがゴールデンレトリバーのように穏やかなイヌではなかったことでした。
一度見たら忘れられない美形のエルマー。写真で見ると物静かなイメージがありますが、とにかく無邪気すぎた赤ちゃん時代が。生後7ヶ月くらいから自己主張が始まりました。
「とにかくじゃれてきて噛むんだけれど、歯が小さくてとんがっているから、噛まれるとギザギザに痕がついて、痛いんです。それに痕が黒くなる。小さい頃から力が強くて、もう本当に私の手には負えなくて。夫のいうことは主人と思っているからか聞くんだけれど、私のことは友達と思っているみたいで、はしゃぐだけで。上下関係がわかるまでそこから2〜3ヶ月かかりました。マウント取られて、どうしてだろうとよく泣いていましたよ」
それでも真樹さんは、最初は体調が悪かったエルマーのために食事を研究しました。
「1日2食。基本的な体力をつけて、巡りを整える。玉ねぎやネギ、シュウ酸カルシウムはNG。
たんぱく質、食物繊維、炭水化物をバランスよく。冷めたものは食べさせず、夏は外に排出しやすいものを。冬は温めるものを。白菜、キャベツ、おいも、かぼちゃが大好きで、夏はきゅうりを食べますね。エルマーのために作ったご飯は、そのまま塩胡椒すれば人間のダイエット食、成人病予防食になるんですよ」
時折、SNSに上がってくるエルマーご飯は彩りも綺麗で美味しそうです。
「朝起きた時から、エルマーのご飯をつくって、夜寝るのを見届けてが、普通になりました」
エルマーはお風呂も大好き。
「エルマーはアレルギーもあって、土の中のカビに反応するらしく。だから、ドッグランから帰ってきたら、お風呂に入るんですよ。お湯を溜めると、自分で浴槽をまたいで入るんです。その姿は、メスなのにおじさんみたいに見えますが(笑)」。
真樹さんもお風呂は好きですが、さすがに大きなエルマーとは別々。エルマーはお湯を舐めるので使えませんが、真樹さんは入浴剤は香りを楽しむ唯一の手段として使っています。
「イヌは匂いで人を判断していますし、敏感ですからね。普段は香水とか部屋の香りもつけていません。でも入浴剤だけは、いい香りがしたらいいなと、使っています。鼻の下まで浸かって、香を満喫するんです。でもひょっとしたら、イヌも好きな香りとかあるのかもしれませんね」。
イヌのいるご家庭には、入浴剤を香りのアイテムとして楽しむのも良さそうです。
☆真樹さん提供。入浴剤は入っていません
努力して家族になったエルマーだからこそ、真樹さんはエルマーが大好きになっていきました。
「エルマーは存在感があって、表情が豊か。目の感じが人っぽい。もう小型犬には戻れないですね(笑)。同じ犬種を飼っている人は少なくて、だからこそ仲良くなれるし、エルマーが来てくれなかったら出会わない人に出会えるし。人の縁が広がりました。猫好きだった昔の私は、イヌの飼い主さんたちが、飼い主どうしで楽しそうに話をしているのが不思議で仕方なくて。ちょっとうっとうしいなあぐらいに思っていたのですが(笑)、今はそのコミュニケーションが楽しくて仕方がありません」
初めて代々木公園のドッグランに行った時は、大型犬がたくさん走る様子に怯えていたという真樹さん。
「最初は怪獣じゃん!と思いましたよ(笑)。今は、ドッグランに大きいイヌがいても、可愛かったら触りたいと思ってしまいます。自分自身も、朝も夜も散歩して、アクティブになりました。猫派のときの私は、インドア派でしたから」
この頃の真樹さんは、SNSにも積極的になりました。YouTubeの発信で見る笑顔も、生き生きと以前に増して美しいのです。
エルマーはもう、家族の一員。そう問いかけると、とろんとした目で「そりゃー幸せですよ」と答えてくれたような気がしました。
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photo by Yumi Saito
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Text by Aya Mori