小仲正克社長対談
「日本の香りをもっと知ってもらいたい」。鳩居堂、松栄堂、日本香堂の三社が発起人となり、ゴールデンウィーク終わりの5月12日まで開催中の「香り博」。
京都と銀座にある三社の店舗を巡ってもらい、日本の香りを楽しむ新しい形の回遊型イベントです。これを機に鳩居堂・熊谷直久代表取締役、松栄堂・畑元章専務取締役、日本香堂ホールディングス・小仲正克代表取締役社長の3人が、イベントとその後の展開についてさらに語り合います。
小仲 京都は相変わらずインバウンドで賑わっているようですね。
熊谷 世の中のニュース通りですね。京都に来てくださる方が増えれば、来店客も増えてます。
最近は欧米の方も多いので、アジアからの観光客も、ツアーではなく家族で歩かれていて、旅行の仕方も、コロナを通して変わった気がしますね。
小仲 京都を大好きな観光客として、行くたびに新たな魅力を知るというか、知らない世界がたくさんあるので。
お寺の拝観に始まって、食事も美しいし、美術館や、お茶や座禅体験も、京都ですることが、なんだか特別に思えてきます。
アクティビティも増えているんでしょうね。
畑 弊社は当代が、香体験には重きを置いてきました。施設内の香りを担当してもらえないかという依頼も増えました。
小仲 緒方信一郎さんが、2019年にオープンされた『OGATA Paris』にも入っておられますね。パリに居ながらにして和の心を楽しめるという。お茶とお菓子、食文化、香りに至るまで。
畑 そうです。1階は物販、2階がギャラリーで、3階が和食のレストラン。総合的に日本の文化発信基地のような展開をされるなかで、香りも集めたいということでお声がけをいただきました。
小仲 松栄堂さんは、若いお客様が増えたという話を伺いましたが。
畑 はい、とても増えました。
2018年に松栄堂本店の隣に薫習館というミュージアム・スペースを作ったんです。「企業ミュージアムとしては1年間に1万人が来場したら成功です」と言われていました。
情報発信をさまざまに工夫し、数字的にはクリアできました。
ところがコロナ禍に入った2020年にはお客さんも減って、海外からの旅行客も格段に減ってしまいました。
でも、関西圏に旅行に来る若い世代が少し増えたんです。
そんななかでSNSのインフルエンサーと呼ばれる人がたまた「こんな写真を撮れるよ」と、ミュージアムスペースで撮られた写真に、一気に注目が集まって。
それで、若いお客さんがとても増えたんです。
小仲 バズる、という状態ですね。
畑 はい。私たちはそんな風になるとは一切思っていなかったので、正直、とても驚きました。でも本店の看板を見て本屋だと思っている人や、ただ写真を撮って帰るだけの人も多くおられたので、1年くらいは結構苦悩しました。
スタッフのみんなが手を変え、品を変え、こんな企画をしたらどうだろうと試行錯誤するうちに、だんだん買い物をしてくださる機会が増えていったんです。