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    第8回『砂糖菓子のリボン』

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 ほんの数分の眠りだったのだろう。香苗は卵色のセーターの肩で目覚めた。
 なんだかバニラのような甘い香りがする、と思った。

「あっ、すみません」
「いや、オレがでかいから」

 彼の手にはひと口かじったクリームパンがあった。

「あ、クリームパン!」

 さっきのCAと香苗のやり取りを聞いていた彼は、香苗が怒ったように言ったので、バツが悪そうに笑った。

「は、半分食べます?」
「いや、いいです」

 CAさんってイケメンには優しいんだね、と香苗の口から思わず本音が出た。彼はくすくす笑って聞いた。

「君、学生なの」

 香苗はまた小さく憤慨した。

「24で、もうすぐ5よ。あなたこそ学生さんでしょ。春休みにパリへ行くのかな」

 彼はクリームパンをあっという間に平らげ、親指についたクリームをぺろっとなめて、紙で拭いた。

「いや、乗り継ぎでナンシーまで」

 聞いたことのない土地の名前に香苗は興味をもった。
「ナンシーっていうところに、何をしに行くの」
 彼はコーヒーをひと口飲んだ。手の中の紙コップが香苗のよりも小さく見えた。

「製菓学校に行ってて、あの、砂糖細工を勉強しに。そこが本場らしくて、先生の紹介で。ナンシー。どんなとこなんだか。オレ、パリにも行ったことないし。… フランス、何度も行ってるの」

「ううん。2回目かな。でも婚約者がもう向こうに行ってて、もうすぐ住むかも」

「住むかも、って、婚約してるんだったら、住むんでしょ」

「ま、そうだけど」

 香苗はなぜか彼の前では何も気構えずにいられる自分に気づいた。まるで本当に学生時代に戻ったかのように。

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