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    第109回:内田輝さん(クラヴィコード作家で奏者、サックス奏者、調律師)

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《2》一音に責任を持つために楽器も自分で作れたら

 言葉だけを見れば理解しづらいかもしれませんが、内田さんの人となりに出会えば、その清潔感を否定するような言動が耐え難く思えるのは理解できます。
 精神的ストレスから、一時的に楽器を演奏することができなくなった内田さんは、ジストニアという病名を知ります。

「筋肉がやろうとすることの逆反射をしてしまう現象です。弾こうとしても手が動かない。それで、演奏活動ができないので、演奏家兼調律師の先生に調律を学ぶことにしたのです」

 演奏を一旦離れ、ピアノの調律を学び始めた内田さん。それが後にクラヴィコードという楽器との出会いにもつながるのですが。最初はお小遣い稼ぎの気持ちだったそうです。

「1週間ぐらい教えてもらい、あとは現場で、という感じ。調弦するテクニックは最短2日あれば教えられますね。僕は調律の会社で、アルバイトをしながら覚えました。ピアノ調律は後々、音楽への応用がたくさんできました」

 もともと内田さんは耳が良かったのでしょう。「音を聴く」ことにまっすぐ向かい合った彼は、どんどん音の中の構成音を聴き分けていくようになったのです。

「自然倍音列は高音になっていくほど、構成音が増えていくんです。例えばドの音なんだけど、構成音は13ぐらい聴こえる。何時間もかけてピアノの周波数帯40から4000ヘルツと向き合い聴き分ける日々でした。それは、大学で学んでいる音楽理論になる前の音の自然現象を体感することでした。講義では本に構成音や倍音の話が出てきますが、それを体感として教えてもらうことはなかったからです。構成音が体感でわかると、CのコードからGへ行って、なんで最後にCに戻ってくるのが落ち着くのかが、音の現象からわかるのです。そのことで、自分の音楽は変わっていきました」

 不思議なことに、音の中身を深く知っていった内田さんの左手は動くようになっていきました。

「音に対する不要な意味づけが消えていったというか。精神的なフィルターが取れたのです。そこで、楽器を自分で作ることができたら、さらに音楽に応用できると思いました。一音に責任を持つためには楽器も自分で作れたら、と」

 そんな時、西洋音楽史の先生に紹介されたのがクラヴィコード製作家でした。

内田輝さん

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