桑田佳祐さんやサザンオールスターズのコンサートをサポートすることもある斎藤さんは、桑田さんがデビュー前からの先輩後輩の間柄。サザンがデビューする1年前、青山学院大学の軽音楽部に、1年後輩として斎藤さんが入部しました。
「それでサザンがコンテストに出るときに応援に行ったりしていましたよ。紙吹雪を作って。頼まれたわけでもないのにタスキをかけて、のぼりを作って。そうすると審査員が『このバンドはもうファンがいるのか』と勘違いしてくれそうでしょう(笑)」
斎藤さんは大学3年の終わり頃、桑田さんに就職相談をしたことがあったそうです。
「生半可な気持ちでね、『音楽関係の仕事はないですか』なんて言っちゃったんです。そうしたら『おまえが音楽を辞めるのは10年早いよ』と言われました。20年後くらいにその話をしたら『絶対言ってない』と言ってましたけど」
親御さんが会社員だったという斎藤さん。生真面目なところがあったのでしょう。
「親もそうだったし、普通の道に行くのかなという気持ちがあったんですね。でも桑田さんの一言で方向が変わりました。進むべき道に気がついて本当に良かった。でもいまだにふっと『普通の企業に入ってもちゃんとやれてたかもな』と思うことがありますね」
先輩である桑田さんから、今回のアルバムにはビッグなプレゼントが。斎藤さんの曲に初めて歌詞を提供してくれたのです。その曲が『涙のMidnight Soul』。
「コーラスなどで僕のアルバムに参加してもらったことはあったのですが、今回は歌詞をお願いしました。40年以上の付き合いですから、さすがに僕のことをわかってくれていて。情けない男の歌なんです。『お腹が痛い』という歌詞が出てきて『これ、僕のことですね』『うん』なんていう会話もありました(笑)」
それは斎藤さん自身が書く歌詞と、かけ離れていないのがなんとも絶妙。
「僕が書く歌に煮え切らない男がよく出てくるんです。この歌の主人公はさらに煮え切らず、切なくも楽しい。笑顔で歌う切ないラブソング。これからどんんどん歌っていきたいですね」
自分よりも、そばで見てきた人が描く自分。その方が客観的でぴったりなことはよくあります。そしてそこに桑田さんのBIG LOVEを感じられるのです。