斎藤さんはこの日、オーダーメイドした世界にたった一つのギターを見せてくださいました。
「ニューヨークから2時間くらい車で行ったところにある、ナザレスという山間の町にMartinの本社があるのです。そこへ行って、打ち合わせをして作ってもらったんですね。表、サイド、バックにどんな木を使うか。そして、貝細工でサインを入れてもらうのに『いつもはどんなサインを書くのですか』と聞かれて。saitoのiの上の●を星にしているのを見せたら、じゃ、ここは星にしようと言ってくれました。出来上がるまでに8ヶ月かかるのですが、もうワクワクしながら待っていました。日本の代理店の方が『今、成田の税関を通りました』とか、逐一連絡をくれるのが嬉しくて」
ギターを持つと、斎藤さんの表情は一気にキリリとミュージシャンに。
「ギターを持っていないとどこか不安なんです。でね、この香りがいいんです。初めて僕の手元に来て、ケースの蓋をあけた時の香りは忘れません。なんとも良い香りがしました。サイドバックのローズウッドの香り。ここがマホガニーだったらもう少し甘い香りかな。表の板はスプルースですから、また松の独特の香り」
最初の香りは斎藤さんの心にしまわれているのですが、今もまだ少し良い香りが。
「ライブ中にもふっと香ることがあるんです。それにアロマ効果があるのかもしれませんが、すごく自分を落ち着かせてくれるんですよ」
このギターの影響でしょうか。普段の生活でも、木の香りは斎藤さんを心地よくしてくれるそう。
「家では檜のアロマオイルを使ったりします。観光でも木々が生い茂る場所が好きなんです。雨上がりにマイナスイオンがその木々の香りをいっそう立ててくれる。その香りは、パンの焼ける香りより好きだなあ」。
コロナ禍の2年間、通常のライブができない間も、斎藤さんは配信ライブなど積極的に行って来ました。
「作っているものをいつになったら届けられるんだろうという思いはありました。けれども、これまでも音作りはこもってやりますから、落ち込むことはなかったです。リモートで配信ライブをやることでテンションをつなぎました」
拍手や歓声がない状態もこんな工夫で。
「性格上、拍手がない間は怖いのでどんどん喋って。挙げ句の果てにかつての拍手を編集して効果音的に使ったり」
しかし斎藤さんの演奏へのテンションを支えたのには、こんな大きな体験がありました。
「’89年に、有明エムザでステージの上で一発録りの新曲レコーディングをやったことがあるんです。それもギターにドゥービー・ブラザーズのジェフ・バクスター、ドラムスにチャド・ワッカーマン、キーボードにグレッグ・マティソンというメンバーで。あの緊張感はすごかった。今でもライブで歌うときは、あの緊張感に届いているか、と自分に問うんです。だめだ、ちょっと疲れてるな、とかね。基本的に僕は石橋を叩いて渡るタイプで本番まではアプローチするんですが、ステージに立つと準備したものは、全部取っ払われます」
また近々、斎藤さんがハジけるステージを観たいものです。本物の熱い拍手がそこには溢れることでしょう。
■斎藤誠本人オフィシャルサイト:http://www1.odn.ne.jp/~cah32600/
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斎藤誠 NEWアルバム『BIG LOVE』
2022年1月26日(水)発売
数量限定生産盤(CD+LIVE DVD+Tシャツ) XNSC-30009/B ¥6,800(税込)
通常盤(CD) XNSC-30011 ¥3,300(税込)
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取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
http://moriaya.jp
https://www.facebook.com/aya.mori1
撮影 初沢亜利(はつざわ・あり)
1973年フランス・パリ生まれ。上智大学文学部社会学科卒。第13期写真ワークショップ・コルプス修了。イイノ広尾スタジオを経て写真家として活動を始める。
東川賞新人作家賞受賞、日本写真協会新人賞受賞、さがみはら賞新人奨励賞受賞。写真集に『Baghdad2003』(碧天舎)、『隣人。38度線の北』『隣人、それから。38度線の北』(徳間書店)、『True Feelings』(三栄書房)、『沖縄のことを教えてください』(赤々舎)。
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