コンサートで世界中を駆け巡る八神純子さん。ステージに上がる前には、必ず香水をつけるのだそうです。
「『さあ、うたうぞ!』という感じ。英語で幸運を呼ぶおまじないとして『Knock on the wood』というのがあるんですね。ある指揮者が本番直前に木の床をコンコン、と叩いてステージに出て行く姿を見ました。英語のそれは、木に精霊が宿っていて、触るとそのパワーをもらうというような言い伝えがあるらしいですが。私の香水もそれと似ています。うまくいくように、変な緊張をほぐして、大丈夫だと思うおまじないなんです」
もう一つ、いい香りがする女性として歌いたいという思いが。
「ステージに立つときに、自分のことを『なんて嫌な人間だ』なんて思ってしまったら、そういう歌になってしまいそうな気がします。素敵な女性として、素敵な自分でうたう方が、皆さんにも気持ちよく素敵に歌が届くと思うのです。『いい香りがする』というのは、素敵な女性の必要条件だと思います。そういう意味でも、自分に香りをまとわせているのでしょう」
香水の種類はたくさんあるようですが、選ぶ基準は自分らしさ。
「香水はたくさんもっています。なんの香りですか、とよく聞かれますが、同じ香りでも人によってつけると香りの立ち方は違いますからね。香りは時間と共に変わっていきますし。強いて言えば、個性的な香りが好きです。人があまり手を出さないような」
その香りがその日の八神さんの香りになる。熟練した香りの使い方と言えます。
「日本人はあまり香水を使わないですよね。10人に1人くらいじゃないですか。でも、日本で香水を上手につけこなしている女性に出会うと、アメリカを思い出します。逆に、アメリカにいて日本を思い出す香りは、ヒノキの香り。檜風呂なんて、アメリカにはないですから。深いお風呂にどっぷり浸かりたくなりますね」。
撮影 事務所様提供