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    第131回:松井五郎さん(作詞家、アーティスト)

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《2》降りてくるまで待っていたら、間に合わない

 適度な距離を保ちながら、アーティストを客観的に見つめ、その良さを引き出す詞を書く。松井さんのものづくりの姿勢は、たくさんの名曲を提供した安全地帯に対しても同じでした。

「玉置浩二さんとは年齢も1個しか違わないし、当時はもっている世界観が近かったと思います。バブル経済の終焉もあったり、色んな意味で混沌とした時代だった。現在は、過剰なくらいにコンプライアンス的に言葉に神経質な時代ですが、あの頃は、もう少し表現に自由度があった。淫靡さや背徳といった、今ではチェックが入りそうな表現にも挑戦できた。安全地帯の世界観も、そのバンド名とは逆のニュアンスで作り上げたところがある。作業としては、まず曲ができてきて、そこに僕が詞を載せる。当時、浩二は感覚的に言葉を捉えていたところがあって、詞の意味よりも、音楽としてフィットしないと受け入れていませんでしたね。そこが合うまでは何度も書き直していきました」

 しかし、そこにあったのは「井上陽水」という壁だったといいます。確かに、安全地帯が世の中に大きく知られることとなったのは1983年にリリースされた4枚目のシングル『ワインレッドの心』。作詞は井上陽水さんです。

「高い壁でした。言葉の組み合わせが絶妙でしょう。核にある意味やテーマに対して普通の人が考えないような言葉の組み合わせが刺激的ですよね」

 言葉の組み合わせ。松井さんは、それを自分なりの手法で発想していきます。

「日常、五感を使って体感することを、どうやって言語化していくかですよね。例えばペットボトルに入った水を誰かに説明しなければならないとき、固有名詞があれば楽です。それで共通の認識はできますが、自分が見ている水と相手が認識する水を言葉で一致させていくのは容易ではない。簡単に思えて、実は物事を言語化していく作業はむずかしいですよね」

 どう言語化していくのか。松井さんは「降りてくるまで待つ」人ではないようです。

「とにかく、書いていくんですね。メロディに合わせて。例えば四文字必要なメロディがあったとすると、ラブソングとか、応援歌とか、大きなテーマは決まっていますから、それに沿って思いつくまま書き出す。手を動かす。じっと原稿用紙を見つめて降りてくるのを待つような感じではないですね。母音など言葉がもっている音としての性格が音楽的に成立するかも考えながら、勿論、言葉そのものの意味も深掘りしていきます。白とか赤とか一言で括っても、色々な色の名前があったり、花なんかもそうですよね。そういった事を紐付けしていく。右脳と左脳をスィッチングしながら書いているような感じですね。説明的になりすぎないように、逆に抽象的になりすぎないように。バランスを考える」。

松井五郎さん

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