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    第164回:宮森義弘さん(宮泉銘醸株式会社 代表取締役社長、杜氏)

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《2》コンクールのためではなく、自分の舌を頼りにつくりたい

「酒造アカデミーは『全国のコンクールで勝てる酒』を教える学校でした。経営者と杜氏の両方が学びに来ていました。最初は杜氏向けの学校だったのですが、その後、酒蔵の後継者も集まるようになっていったんです。この酒造りのやり方で行こうと決断するのは経営者側ですから。そこで学んだ酒造りの理論を蔵に持ち帰って、蔵での技術と比較しながら、こっちの方がいいんじゃないかと、造り方を自分の考えに合わせて選んでいきました」

 自分たちの造るお酒はすべて高い技術で造る。

「よくありがちですが、9割9分の酒蔵が一般的に売っている市販酒とは別にコンクールに出品する専用のお酒を造っています。なぜなら高い技術で造るお酒はコストも手もかかるから。うちが経営難だった時代はコストを気にするあまり、多くのアルコール添加をして、味を気にせず手もかからないような技術の低い簡単な造りのお酒ばかりを製造していた。しかし、うちはそんな規模の大きい蔵じゃない。であれば、それを全て変えて、コストや手がかかろうとも、市販酒・コンクール関係なく造る酒すべてを高い技術で造ってやろうと。僕のやり方は手がかかりますから、その時いた杜氏や蔵人たちは『そんなに細かくやっても売れない。理想を語るな。うまくいくわけがない』と言われました」

しかし、その宮森さんの考えの成果は、市販酒の出荷量が増えただけでなく、その味も全国で評価され酒造りを始めてたったの3年で、全国コンクールで3位までに入賞する酒を造ってしまいました。

「出荷は増えました。でも工場ラインに載せるような造り方はしたくない。数字に寄りすぎず、自分の舌を頼りに造る。そのスタンスは変えたくないんです」

宮森義弘さん

《3》日本酒の香りは”立ち香”か”含み香”か

 香りも旨味もある日本酒の世界。
 宮森さんの手がける『写楽』は、ひと口飲んだ口内でふわりと豊かに香る酒。

「お酒の香りには2種類あります。カプロン酸エチルと酢酸イソアミルです。コンクールの酒は、カプロン酸エチルの香りが出るような酵母を使います。これは飲む前から華やかな”立ち香”と呼ばれる香りです。一方で『写楽』と『會津宮泉』は、酢酸イソアミルが醸す香り。口に含んだときに香る”含み香”と呼ばれる香りです」

 ”立ち香”の代表的な酒は『獺祭』や『十四代』だそう。

「”立ち香”の酒は入門編としては華やかで良いですね。海外の人にも分かりやすいと思います。どちらも好きなんですが、僕は自分で造って自分で飲むなら”含み香”の酒を選びます。選択肢はいろいろある方が良いと思いますね」

 酒の香りを生み出すファクターは酵母、原料米、貯蔵管理の3要素があるそうです。酵母は全部で20〜30種類あり、全て国が管理して共有しあっています。そのなかで、どう個性を出していくのでしょう。

「最近は、その県の蔵から抽出した酵母や、花から抽出した酵母もあり、ようやく酒蔵の個性が出始めてきたかなという感じです。もう一つ、水にはかなり地域性があります。福島は硬みもある中軟水。ミネラル感はそんなに強くはありません。そういう全ての要素をどうコントロールするかが、酒の設計です」

 日本国内はもちろん、海外でも高く評価されて人気の酒を造るようになった宮泉銘醸。『冩楽』も『會津宮泉』も、美味しい料理に合わせることで更に旨みを増すようなお酒です。

「東北大震災のときも、酒蔵はかなり損傷しましたが、全国の飲食店の方々にたくさん助けていただきました。本当にありがたかったですね」

 美味しい酒と美味しい料理がしっかりと結びついていたという証でしょう。10年足らずのうちに『写楽』は多くのファンの味覚を捉えていたのでした。

宮森義弘さん

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