「母親のお腹の中にいるときからヴァイオリンの音色を聴いていたことになりますね」
そう言って微笑む髙木さんが初めてヴァイオリンを触ったのは、2歳のとき。
「祖父母の家に転がしてあった、壊れたバイオリンを引っ張り出して、『ドラえもん』に出てくるしずかちゃんのようにギコギコと弾いたそうなんです(笑)」
その壊れたヴァイオリンは、彼女のお母様の妹が使っていたものだったそう。
2歳の髙木さんがギコギコと弾いた。それがどんな音だったとしても、ご家族は彼女が自分でヴァイオリンを手に取って弾き始めたことに驚き、きっと幸せな気持ちでいっぱいになられたのではないでしょうか。
「3歳からは習いに行くことになりました。でも幼稚園や小学1年生くらいまで、私はどんな家庭にも一家に1台、ヴァイオリンがあると思っていたんです!」
他の楽器には興味がまったく湧かなかったようですが、ヴァイオリンのレッスンは厳しく、辛いと思ったこともあったよう。
「帰りたくないなと思ったことはありましたが。小2から出始めたコンクールではすべて1位でした。ただ、その時点で、譜面は読めていなかったんです」
耳で音を聴きとって覚え、弾いていたという幼少時代。それもすごい技量ですが、いよいよ、この先本気でやっていくのかどうかと決断を迫られたのは、小4のときでした。
「両親に『この先、本当にやっていくなら、生半可なことでは無理。他の道に行きたければ、それなりの進学塾に行きなさい』と、言われました。私は勉強は嫌いだったので、だったらちゃんと譜面や音楽の勉強をもっとしよう。ヴァイオリンに打ち込んでみよう。ヴァイオリニストになろう、と」
それでも、小学生のときは、毎日のように泣いていたと言います。
「友達と遊ぶ暇もなくて、休日はずっと練習ですから。運動会って土曜日にやるんですよね。そうすると、ちょうど音楽教室があるし、参加できない。行事にはことごとく参加できなくて、それが辛かったです。でも辞めなかったのは、やっぱりどこかでヴァイオリンが好きだったのかもしれません」。