もっと世に出ねば。その想いが真打披露興行の千秋楽にもかかっています。
1月21日、日本武道館で開催するのです。
「前座のときに、勉強会をやらせてもらったら80人集まってもらえたんです。普通、前座でそういう会はやらないんですが、うちの一門はそういうところも自由だったので。それで、今度は二つ目昇進のお披露目をやったら800人集まってくださった。10倍ですよ。じゃあ10倍で、真打は8000人の武道館だと。死ぬ気で埋めなきゃいけないので、手売りでもなんでもやって埋めるしかない。20年以上の付き合いがあるゲッターズ飯田さんに、運気はいいと言われているんですが。
でも昨夜40万円なくなりましたからねえ。いや、あれで命拾いしたのかな」
それにしても、二つ目披露で800人が集まったり、真打披露パーティーに600人が詰めかけたりと、とにかく人に愛される満堂さん。人付き合いに心掛けていることは「フラットさ」だと言います。
「僕は特に何も考えていませんが、人を肩書きで見たりはしないです。誰に対してもフラットですね。年下であろうが年上であろうが、みんなに甘えるし。あと、銀の鳳凰座なんで1度決めたら責任は取りますから。でも、集まってくださるのは本当に皆さんのおかげです。周りの方々には感謝しかないです」。
「人としてちゃんとしていない」というおかしみの言動の根底にある人に対する真面目さ。その独特のギャップのある満堂さんに、好きな香りはと尋ねると、即答でこんな答えが返ってきました。
「お相撲さんの鬢付け油の香りが好きですね。相撲が好きなんで」
相撲が好きというのにも、こんな理由がありました。
「相撲とお笑いは似ているじゃないですか。三役にまで上り詰めても、勝てなかったら落ちちゃう。落語は真打になったら真打のままだけれど、お笑いはどんなに一発当てて売れても、実力がなければ落ちていく。そういうところがいいなあと思うんですよ」
相撲の世界の厳しさに似た「お笑い」の世界の厳しさ。そういうものを感じ取っている満堂さんだからこそ、落語の世界のことも客観的に見ているのでしょう。
新しい落語の扉を開く存在として「錦笑亭」が繁栄していくのも、長い目で見た落語界にとっては面白いことになるような気がします。そして1月21日に日本武道館に集まる人たちが、その目撃者となっていくことでしょう。
チケット情報はこちら。
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取材・文 森 綾
フレグラボ編集長。雑誌、新聞、webと媒体を問わず、またインタビュー歴2200人以上、コラム、エッセイ、小説とジャンルを問わずに書く。
近刊は短編小説集『白トリュフとウォッカのスパゲッティ』(スター出版)。小説には映画『音楽人』の原作となった『音楽人1988』など。
エッセイは『一流の女が私だけに教えてくれたこと』(マガジンハウス)など多数。
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撮影 萩庭桂太
1966年東京都生まれ。
広告、雑誌のカバーを中心にポートレートを得意とする。
写真集に浜崎あゆみの『URA AYU』(ワニブックス)、北乃きい『Free』(講談社)など。
公式ホームページ
https://keitahaginiwa.com