大谷亮介さんは兵庫県西宮市の出身。都心に近いながらも、自然豊かな場所で育たれたようです。
「仁川っていうところで、僕が幼い頃はまだ田舎で。実家の近所の山とか、庭とか、無花果とか山椒の実がなっている木があってね。そういう育った場所の香りはすごく記憶に残っています。金木犀の花の香りとか。でも、東京の近代的な街には、そういう香りがないよね。うん。近代的な街には匂いがない。自然がないから。それは養老孟司さんもおっしゃってたけど、自然のものをなくすと、みんなの頭がお金のことしか考えなくなるからなんだって。一個のことしか考えない人間の方が管理しやすい。そうやって操作されているのかもしれないね。だって自然の木とか実のいい香りがしたら『ああ、いい匂いだなあ』って、そのことで満たされるものね」
子どもの頃の夢は、ターザンになることだったそうです。
「子どもの頃はターザンとか、原始人に憧れていたんです。今も江戸時代くらいがいいんじゃないかと思う。だって日本のもので、世界で評価されているものは明治時代以前までに出来上がったものがほとんどですよ。浮世絵とか、漆器とか、日本家屋とか。近代的な都市は好きじゃない。自然がある方がいいなあ」
ターザンになりたかった大谷少年は、大谷さんの心の中に生き続けているようです。演劇の世界に入ったのは、ひょんなことでした。
「あまり勉強しなかったんです。小学生の頃は、先生が集合と言っているのに、鶏小屋で鶏が動くのが面白くてじっと見ていたり。ものづくりは好きでね。自分で粘土でキャラクターを作って、それを使って人形劇みたいなことをやっていました。大学の時、同級生と寮にいて『おまえ、きっと役者とか向いているから、劇団を受けてみたら』と言われて、軽い気持ちで行ったら受かってしまって。そのままやっています。合っていたんですね。え、もうすぐ70? 秘密にしとこう、みたいな(笑)」
ルックスは渋くてかっこいい大谷さんですが、ご自身には年齢相応の悩みも。
「かくしゃくとしていたいけれど、いろんな心配が出てきます。終活とかしなくちゃいけないし。とにかく使わないモノがいっぱいあるんだ。家がぐちゃぐちゃで、90%のものは3年間は触っていない。演劇関係の本とかいっぱいあるし。この間、神保町の八木書店に売りに行ったんだけど、2冊また買っちゃった(笑)」。