鶴田真由さんが初めて写真と触れたのは、小学校の頃でした。
「自分なりにストーリーをつけて写真をアルバムに貼り、文章を添えたりしていました。その後、高校時代にインスタントカメラが流行って、卒業の頃に学校に持っていって、学生生活を撮影したりしていましたね。もしかすると、それが私が初めて意識をもって写真を撮った始まりだったかもしれません。それから、大人になって初めて一眼レフのカメラを手にしました。友達の結婚式に写真を撮り、アルバムにしてプレゼントしたんです。20代後半からは旅を始めるようになり、カメラが私の旅のお供になりました。やがて本格的なニコンのD850というカメラを持つようになり、それが作品を撮るきっかけになりました」
今回の写真も、そのD850で撮影したもの。
「今日は花の撮影に行くぞ、と決めて撮影に行きます。カメラというのは、その人の目線、普段、何を見て過ごしているのかとか、どういうものの見方をしているのかなど、それぞれの違いが感じられて楽しいですね」
初めての写真展は、キューバの旅を撮ったものでした。
「ドキュメンタリー番組でキューバへ行ったんです。そこで撮った写真のなかから、主にポートレートを選んで発表しました。その後、カメラマンの小林紀晴さんとインドを旅して、二人で合同の写真展を開催しました」
2017年、その時の写真集『Silence of India』という共著が発刊されました。
「インドの聖人が開いた瞑想センターなど、静かなインドを旅しました。インドといえば牛も人間もみんなが全部ごちゃごちゃになっている、その喧騒や混沌をイメージされる方が多いと思います。本当に振れ幅が大きい国です。私は賑やかなインドよりもその奥にある静けさを撮りたいと思いました。何層にも分かれているインドのレイヤーの瞑想的な部分を撮りたかったんです」
鶴田さんがインドで撮った1枚のある写真にはアシュラム道場で一人の女性が自分の心と向き合っている姿が。
「写真の一方に写っているイヌは、野生のイヌです。人も動物も自由に出会い、さまざまな動物が施設に入ってきて、時々ご飯をもらったりしている。そしていろんな場所でみんなが静かに瞑想している、とてもピースフルな場所です」
その南インドの旅の最後に、鶴田さんは会いたかったヨガの先生にも会えました。
「時々、自分の前世はインド人だったんじゃないかと思うんです。最初に行ったとき、空港に向かう帰りのタクシーの中で、帰りたくないなぁ、と涙が出てきてしまいました。胎内から離されてしまうような感覚があったんです」。