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    第216回:渡辺えりさん(俳優、劇作家、演出家)

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《2》構想を練りながら、芝居をやる日々

 新派の舞台が終わると、7月8日に頭脳警察の追悼コンサートのゲストで2曲歌い、8~9月は10月にシアタートラムで上演される結城座・江戸糸あやつり人形劇『人形たちと星の王子さま』の脚本と演出を。
 怒涛のような仕事ぶりです。

「結城座さんには前に新作を書いて大好評でした。依頼三本目なので、また新しいことをやりたくてお引き受けしました。これ、すごく面白いんです。江戸糸あやつり人形劇は400年続くもので、ウィーンでマリアテレジアが作ったシェーンブルンマリオネット人形劇よりも古いんです。実際に操りをやりながら、セリフをしゃべるんです。サン=テグジュペリの『星の王子様』をもとに、もっと破天荒な反戦の芝居に書き直しまして。新内の奏者が台詞を喋り人形と会話するシーンもあります。アルゼンチンのシーンではタンゴの音楽なんですけど、ピアノとバイオリンやバンドネオンの楽器と生の三味線もそこで聴けるという。これもぜひご覧いただきたいですね」

 いったい何人分の仕事をされているのかと思える渡辺えりさん。脚本家としても岸田國士戯曲賞を始めとして数々の受賞歴があり、演出も含めたトータルな舞台づくりができる人。

「いつも考えています。構想を練りながら芝居をやって。『星の王子さま』はもうほぼ書けたので、もう一本、頼まれたのも8月中に書いて。だから、共演している役者さんの会話なんかも、なんか使えるセリフがあるんじゃないかと思って、よく聴いていますね」。

《3》昭和と今をつなぐ、若い役者たちのヒップホップを求めて

 演じる世界に飛び込んで、52年。来年は古稀を迎えるという渡辺さんですが、そのパワーは、20代や30代の人も敵わないのでないかと思えるほど。
 1月の古稀記念連続公演『鯨よ!私の手に乗れ』『りぼん』のための、若い出演者のオーディションも自らの手で行いました。
 そのオーディションの終わった翌日、もう一度、電話インタビューに応じてくださいました。
 電話をすると「どちらの事務所の方でしたでしょうか」というお返事。簡単に説明すると思い出されたようでした。なんとその日、オーディションに合格したおひとりおひとりのマネージャーに電話をし、内容確認をされていたのでした。

「書類選考で120人に絞って、7人取りました。『りぼん』に登場する修学旅行生の役で、ヒップホップダンスが踊れる人と、劇中で演奏しながら演じられる人を取りたかったので。オーディションは、歌、踊り、課題の台詞の他、共演者とのエチュード(想定芝居】もやってもらって、出演の決まっているベテランの役者とのバランスを見ました。ベテランの役者とのコミュニケーションを通じてキャッチボールができるかを見ました。相手役をする人がいて、対話しているキャッチボールで、役をどう捉えているかを見るんです。『りぼん』は感じとる心がないと難しい。ひねくれていたっていいんです、芝居に対して純粋ならば」

 『りぼん』は、現代の横浜を舞台に、関東大震災後に建てられ、最近取り壊された「青山同潤会アパート」の住人だった3人の女性の「水色のりぼん」の記憶をたどりながら、その過去に捨て置かれていた子どもたちの物語。バンドネオン、ピアノ、ギターの生演奏とダンスシーンとともに尽きない悲しみが描かれます。

「そこに昭和の生徒たちが現れて、現代のヒップホップを踊る。テーマは反戦とフェミニズム。2003年に初演、2007年に再演して、2020年にまたやるつもりでしたが、コロナでなくなりました。それにしても、初演のときは、もっと未来は良くなっていると思っていたのに、今はさらに悪くなっている。世界全体が平和で幸せな未来を願って上演し続けているのでこういう世の中になった責任も私たちの世代にはあるのではないか?という思いもあります。諦めずにやり続けたい。自分自身が諦めたら終わりですから」

 古稀記念公演のチケットの発売は9〜10月。あっという間に無くなりそうですから、早めにチェックです。

渡辺えりさん

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