SKE48を2022年に卒業後も、俳優としてタレントとして、活躍の場を広げ続けている須田亜香里さん。9月19日に全国公開される映画『男神』(監督・脚本 井上雅貴)では、純粋に主人公を見守る女性を静かなまなざしで好演している。
ギリシャ神話にも日本の『古事記』や『日本書紀』にも、死後の人間がいく異界が登場する。
この世に生きている人が、その異界(この映画では「根の国」と呼ばれる)へ行ってしまった愛する者を連れ戻そうとする物語が同じようにあるのだ。映画『男神』は、その概念をもとに、ホラーであり、サスペンスであり、ファンタジーでもある作品に仕上がっている。
物語は、一般の人が入ってはいけないとされている大きな穴が建設現場に見つかるところから始まる。
須田亜香里さんが演じるのは、建設会社の社長の娘、山下愛子。タンクトップ姿で泥だらけになりながら、誰よりもよく働く闊達な女性だ。一般的に想像してしまう「社長令嬢」のイメージとはかなり違う。
「最初、サイトには山下工務店の社長令嬢、と書いてあったので、ファンの人たちも今日着ているような衣装を想像してくださったようなのですが、違う違う、泥だらけだからね、って。でもその姿は監督のこだわりだったようです。女性が憧れるようなかっこいい感じになっているのは、嬉しいですね」
ボーイッシュだけれど、純粋で健全な心をもっている人なんだろうなという雰囲気が伝わってくる。その雰囲気づくりの中には、こんなポイントもあった。
「ピアスをつけているんですが、それが監督の奥様のものなんです。監督の奥様はロシアの方で、現場でもしっかり活躍されているスタッフの一人なんです。それで『このなかのピアスから選んでください』と、選ばせて下さったのが私物だったんです。衣装用ではなく、人が日常的につけているピアスというところにも、リアリティがありますよね」
仮想のなかのリアリティ。それはこの映画のなかの随所に散りばめられている。
「生き物がたくさん出てくるでしょう。鶏、馬、羊。それも監督のこだわりで、人間以外の動物が画面に入ってくると、映像として深みが増すんだそうです。動物たちの目がくれる、意味ありげな空気の出し方が素晴らしいです」。