
人気モデルとして活躍、2019年にはミスユニバース日本のファイナリストにも選ばれた倉中るなさん。しかし、2023年12月、芸能人が別の才能を発揮して競う番組『プレバト』に出演し、最初の絵でいきなり特待生に。無我夢中で描き続けるうちに、その絵の才能がどんどん開花。いくつものパターンの画風を確立させ、11月29日からは渋谷・Galerie GEEK/ARTで2度目の個展を開催する。彼女らしい立ち位置で無理なく描き続けている、新しいアーティストのあり方に注目したい。
すらりとしたスタイルに大きな瞳。裾が切りっぱなしの黒いショートジャケットで現れた倉中るなさんは、普段からおしゃれなモデルさんといった印象。この人が、絵の具だらけになりながら絵を描いているとはにわかに想像しがたい。
「ずーっと描いていますよ。来月個展があるし、あと13枚くらい描かなきゃいけない。描けるのかなあ、って、自分で自分をちょっと引いて見ている感じですね」
そう言ってにっこり笑う。11月の渋谷・Galerie GEEK/ARTでの個展は、まだ二度目の個展。
「今回は『Distance』というタイトルにしました。今の私の画風は3つありまして、そのうちのひとつ、LOVEというシリーズの抽象画です。離れて観ると抽象画のようですが、近づくと、人が描かれていることがわかるような。観る距離によって絵の印象が変わるという絵を描いているんです」
確かに遠くから見ると、全体にピンクのトーンの絵、ブルーのトーンの絵、というふうに抽象的に見える。でも、近くで見ると、人の動きがみてとれる。
「例えば人間関係でも、距離によって人の見え方って違うじゃないですか。絵も同じように、少し離れてみるとダンスをしているような絵が近づいてみると義足の人だったり、喧嘩しているように見えても、ハグしているとか。今回は”見る”という行為そのものの解釈の揺らぎをテーマにして描いています」
最初の印象では色というものに意識が引っ張られる。しかし、その後、造形が見えて、線の表情がさらに見える。なるほど時間をかけて、ゆっくりとさまざまな距離から見たくなる絵なのだ。
彼女はずっと在廊するそうなので、その言葉も味わって観ることができる個展になりそうだ。
