最初に『プレバト』に登場したのは2023年12月25日。最初の絵で絶賛を浴びることになった。
描いたのは、東京大神宮。
「東京大神宮は、祈願のお手伝いをさせていただいたことがあります。思い入れも深く、すごく神聖な場所なので、丁寧に描かなくてはと思いました」 タイトルは『昼の東京大神宮』と名付けた。
「実際に土を使って、それを絵の具に混ぜて使っているんです。この砂のシリーズは、宗像大社や出雲大社などでも描いています。宗像大社では、国際環境会議があって、そこでライブ・ペイントをしたりというイベントもさせてもらっています。環境問題やゆかりのある土地の砂の作品など。実際に砂を使うと、絵にもすごく存在感が出てきますね」
番組で紹介された『昼の東京大神宮』は、東京大神宮を真正面から捉えた素直さ、緻密さも評価された。
「『一発で特待生を取れなかったら出禁』と言われて、私はテレビに出たことがないので、それを信じ込んで、36時間、寝ずに描いたんです」
その熱意が伝わった。
『プレバト』に出て見た感想を彼女はこんなふうに語る。
「テレビが想像と違っていたのは、スタッフも出演者も全員が本気で、一生懸命で、感情をむき出しにしてつくっている世界だということでした。私の画風が生まれていったのも、お題が与えられて、それに向かって必死で模索していった結果なんです。だから『プレバト』で生まれた絵のオーナーは番組を見てくれたすべての人なんだと思っています」
あるときは、チョークアートにも挑戦している。
「廃校になる学校の黒板に、生徒さんたちに向けてサプライズで描いたんですが、本当に喜んでもらえて嬉しかった。私には生のリアクションがすごく必要なんだと思いました」
大漁旗を描いたり、消しゴムアートをやったり。鉛筆画を描いたり。番組での挑戦は多岐にわたる。
「全国を回るプレバト展というイベントがあるんです。1回目が京都だったのですが、ライブペイントを3日間、やらせてもらいました。毎日3000人ぐらいの方が観に来てくださいました。絵を描いていると、なかなかそんなにたくさんの人に一度に観てもらえたり、会えたりすることはないので。すごく嬉しかったです」

社会と関わり、絵を描き、それを見た人の感動が生まれ、コミュニケーションが生まれる。彼女は『ソーシャル・アーティスト』なのだと自称する。
「ただ自分が描きたいものを描くというだけではなく、社会活動をメインに取り組みながら、みんなで絵を描くとか、企業と一緒に取り組む、というような活動をできたらと思っているんです。ただ絵を描く、ただタレントをするというわけでもなくて」
前出の宗像大社のイベントでは、司会もしたという。倉中さんの必要とされ方は、倉中さんでなければできないことなのだ。
コロナ禍に医療施設に絵を届けるというボランティア活動も、今の活動のきっかけとなった。
「ソーシャル・アーティスト的な活動をしていところから、色々と出会いがあってお話がつながったようなところはあります。そもそも医療系のボランティアに関わったのは、私の母親が医療系の仕事をしていたことがきっかけだったんです」
ホスピタル・アート。それもソーシャル・アーティストとしてこれからもっと携わっていきたい分野だそうだ。
「母のつてで、病院や介護施設に絵を描き始めたんです。そうすると『患者さんが絵のことを話していたよ』とか『病院で働いている人が感想を話していたよ』といった生のリアクションを聞くことができました。絵がコミュニケーションのツールになると実感できましたね。実際に、入院患者の方々、職員の方々が絵の具を飛ばして下地をつくり、その上にレジンをかけて修正や仕上げを行うという、一緒に描くこともやりました。レジン(樹脂)をかけると、角度で色が変わって見えたり、多面的な作品になります」
今年2月から3月にかけては、ネスカフェ原宿とのコラボレーションも叶った。
「お客様みんなで一緒に1枚の絵を描き上げて、医療施設に寄付しました。その絵をまたコーヒーボトルにもするというような企画がありました。こういう活動は増やしていきたいですね」。
