日本を代表する演出家、故・蜷川幸雄さんも、内田さんのことを「舞台で人を笑わせる才能がある」と認め、後進の役者にそれを教えるよう言ったそうです。
「『はーい、シゲ、そのギャグは無し。としたら、次は何が出てくるかな』と、稽古では、本当にいろいろやらされました(笑)」
2006年の『間違いの喜劇』では、小栗旬さんの相手役を女役で務め、大きな評価を得ました。
「素晴らしい役者さんたちとやりとりできる本番が本当に勉強になりました。そう言えるのは本当に運が良かったと思います」
でもそんな内田さんなのに、30代になって先行きに不安を感じるようなってきました。全体に世の中からテレビ離れが始まり、ドラマが減っている状況があったからです。
「今はまだ俳優の仕事でも食えている。でも、俳優の仕事に限ってしまったら、やりたくないこともやらないといけない。違う仕事で収入源をもっておいて、また本物の芝居がしたい」
そんなことを考えて数年経ったとき、上京した頃にアルバイトをしていた自由が丘の店の料理人さんが店を辞めるという話を聞きました。
「10歳くらい上の人で、上京したての頃は隣で働いていたことがあり、信頼関係が凄くありました。それで店をやらないかと声をかけたら『シゲがやるならやるよ』と言ってくれて。2年半前に始めたのが中目黒の『だれかれ』です」
『だれかれ』は、安心で安全な食材を使った創作和食が評判になり、女性客を中心に人気のお店となっています。
「世の中全体もそうだけど、役者の副業も堂々と口に出せる時代になりました。少し前までは、飲食店をやっている芸能人もあまり公には口にしていないようなところがありました。時代は明らかに変わってきたようですね」
『だれかれ』を成功させた内田さんは、先日、2軒目となる飲食店をやはり中目黒にオープンさせました。今度はカレー屋さん。クラウドファンディングで、300万円を達成しました。
「大阪はもともとスパイスカレーの斬新な店が多くて、大阪に仕事で行くことがあると延泊して、何十軒も食べ歩きました。もともとカレーは好きだったのですが、こだわりだすと止まらない」
特にこだわっているのが、香り。
「何十種類もスパイスを調合するのですが、入れるタイミングというのもすごく大事です。苦味のあるものは先に入れてなじませる。カルダモンのような香りの女王は最後に入れて、表情をしっかり立たせる。いろんなものをミックスして自家製ガラムマサラをつくっています」
もう一軒の和食の店へ行くと「すっごいスパイスの匂いがするな」と料理人に言われるほどになったそう。
「僕はスパイスの香りが大好きなので、もう香りについては麻痺しているかもしれません!(笑)」。