ギャラリーは、奥に和食屋さんもある瀟洒な家のような空間でした。実は筆者も何度か行ったことがあります。オーナーは、とても趣味のよい方で、全国の陶芸家と親交をもち、個展の年間のカレンダーをつくっているような方でした。
「そのオーナーさんが森田先生の個展の打ち上げに誘ってくださったのです。そしてみんながいい感じで酔っ払ったとき『森田さん、なんでこの子を弟子にしてあげないの』と言ってくださいました。森田先生は『すでに一人弟子がいるし、これ以上給料を払えないよ』とおっしゃった。私は必死で『給料はいりません』と言いました。勤めていた頃の蓄えも多少ありましたし。すると森田先生は『1回懐に入れると辞めさせられないし』とおっしゃった。そのときに、またオーナーさんが『半年と決めたらどう?合う、合わないもあるだろうし。それにね、大きなブランドのプレスをやっていた人にいてもらうなんて、いろいろあなたにもメリットがあると思うよ』と推してくださったのです」
その結果、その年の9月から弟子入りが決まりました。岡崎さんは決意を示すために、頭を坊主にして茨城に向かいました。
「女性だからと遠慮されたりしないようにと思いました。絶対に陶芸家になるんだという気持ちを示したかったのです」
4年半の修行を経て、岡崎さんは見事に個展を開くまでになります。初個展は広尾のあのオーナーさんのギャラリーになりました。
「もともと、学校も聖心でしたし、古くからの友人知人が集まってくれるかなと。2009年の2月でした。そのときの作品は、すべてとんぼのモチーフにしました。笠間で修行時代に初めて見た、羽黒とんぼへの思いがあったのと、アールヌーボーのエミール・ガレやドームのレリーフが飛び出した作品が好きで、そういうものを表現したかったのです」
曾祖父母のもちものだったという、葉山の先の芦名にあった別荘に窯を構え、
結婚とともに彼女の作陶の時代が始まりました。海に近い窯からは、波のモチーフや、幸せな生活を思わせる花のモチーフなど、新たな作品が次々と生まれています。
「昨年は新しい釉薬をつくることができました。つるっとしない、土っぽい仕上がりになるのです。個展では一点も残らないほど売れてしまったので、継続してまた春頃から作ろうかと思っています」。
幻の新しい作品。次の個展がますます楽しみです。