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    第74回:鏡味味千代さん(太神楽曲芸師)

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《2》しっかり地面に立てていると思える仕事

 養成所は国立劇場にありました。そのとき、年齢制限を超えた29歳の彼女のチャレンジを受け入れてくれたのは国立劇場を運営する日本文化芸術振興財団の理事長の「面白いね」という一言だったそうです。

「ちょうど初めて民間企業であるサントリーから来られた方が理事長だったのです。とても幸運でしたね」

 日本舞踊、三味線などの邦楽器、長唄、行儀見習いなど、厳しい修行は3年間続いたそうです。しかし、彼女の根底には、リアルに舞台への思いと経験がありました。

「小さな頃ピアノも習っていましたし、大学時代はミュージカルのサークルに入っていて、演者も裏方もやりました。ちょうどアメリカから『RENT』が日本に初上陸するのと同時期に、私が演出をして歌詞を訳して、上演したこともありました」

 やがて2011年4月、初舞台を踏むことに。しかし大震災後で、なかなか思うようにお客は入らなかったようです。
 それでも持ち前のエネルギーと語学力を活かし、海外公演にも出かけるように。

「今は寄席を中心に活動しています。学校の芸術鑑賞会で、落語と落語の間に色物として出演したり、お祝い事に呼ばれることも多いです。博物館などの観光スポットやツアーなどで、インバウンド系の外国のお客様にお披露目することも。会社員と比べると、収入は安定はしていませんが、気持ちは安定しています。会社員の頃は、周囲に優秀な方が多くて、自分では先の見えない感がいつもありました。今は、自分の裁量で仕事をいただいて、しっかり地面に足をつけて立っている気がするのです」。

鏡味味千代さん

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