宝塚歌劇・月組トップスターの名男役から、ミュージカルの名女優へと転身して30年。
意外に小柄な剣幸さんは、ぱっと花が咲くような快活な笑顔が美しい人。
当時の懐かしい思い出から、今日までを振り返りつつ、これからにかける思いを語っていただきました。
華奢な体にバランスのとれた「美人」の顔立ち。一見「娘役ではなかったですよね」と確かめたくなるほど、剣幸さんは女性らしい雰囲気の漂う方です。
「今の宝塚は男役といえば180センチくらいある方もいらっしゃいますからね。
1974年に私が入団した頃は、小柄な方も何人かいらして、活躍していらっしゃいました。同期生でトップ娘役だった遥くららは、私より4センチぐらい背が高かった。そんな時代でした」
そもそも富山県の工業高校で建築設計を学んでいたという剣さん。宝塚音楽学校を受験するのも思い立ったようなことでした。
「宝塚ファンの同級生がいて、高1のときから『宝塚を受けたい!』と言っていたのですね。私も演劇部に入っていたし、音楽もダンスも好きだった。最初はクリエイティブな仕事ができたらいいな、と思って工業高校へ進学したのですが、そのとき学んでいる設計が、何かをデザインしたり作ったりするものとは遠いのではないかとだんだん感じ始めていたのです。それで『私も一緒に受けてみる!』と、バレエを半年、声楽は20日間だけ、習いました(笑)」
ところが受験したのは剣さんだけ、そして見事合格。
「当時私は太っていたし、歌の実技試験では、先生が椅子からずり落ちるほど酷かった(笑)。よく受かったと、今でも不思議です」
今の剣さんの胸が高鳴るような歌唱からは想像もできない話です。今では、演劇部の友達も、努力を続け花開いた剣さんの大ファンのようす。
「東京での公演もみんなで富山から観に来てくれます。本当にありがたいです」。