漫画『ONE PIECE』のルフィの身体がぐにゃぐにゃして腕が伸びるのを見ると、筆者はDAZZLEの舞台を思い出します。生身の身体の限界に挑戦するような、彼らの動き。今年25周年を迎えるダンスカンパニーDAZZLEを率いる長谷川達也さんは、現役で踊り続けながら舞台を創作、演出し、振り付けもするスーパーエンタテイナー。近年、映像で見せる360度体感シアターに取り組み、2月27日からは新作『夜想 百物語』を公開。新たな感動の波を広げそうです。
DAZZLEはストリートダンスにコンテンポラリーダンスなどの要素を盛り込み、一つ一つの舞台を丁寧に作り上げてきました。長谷川達也さんはその中心人物。チームは大学時代から続く友人同士です。
チームを率いてきた長谷川さんはこの25年をこんなふうに振り返ります。
「こんなに踊っているとは思っていませんでした。いい仲間に恵まれてつづいています。解散することなくここまで来たのはDAZZLEというチームには自浄作用のようなものがあるから。もちろん、作品を作り上げるまでには意見を戦わせることもあります。でも、それはその時々のことだし、誰かと誰かが険悪になっても誰かがそこを取り持つとか、そんな感じですね」
ミステリー、漫画、民話、歌舞伎、ゲーム…様々な要素を融合させたオリジナルな物語は全く独自な空気を漂わせています。歌舞伎役者の坂東玉三郎さんも惚れ込み、いくつかの公演を演出したほど。
2月27日からはここ数年取り組んでいる360度VRオンラインイマージブシアターの新作『夜想 百物語』が配信されることに。
「NTT西日本が提供しているREALIVE360というサービスがあるのですが、これを使って、360度の映像を見ることができるのです。スマートフォンの場合は、その方向へ振るとぐるっと映像が回転します。YoutubeにPVをアップしていますので、ぜひご覧になってください」
YoutubeのPVをPCで見てみました。左上に出てくる矢印をクリックすると、ぐるぐると画面が上下左右に移動します。
「ストーリーは怪談です。全部で14本あって、今回はDAZZLEメンバーの荒井信治が総合演出を担当。そのうちのいくつかの作品を僕も演出しました。演者の背中で起こっていることを視聴者は見ることができるというのが面白いかも。視聴者が視点を選べるのはゲームをプレイするような感覚でもあります」
元々『百物語』とは古来から行われてきた怪談遊びで、100の蝋燭の火をともし、参加者がひとつ話すごとに一つ吹き消して、99話まで話し終えたら100話目は離さず、霊が降りるのを待つというもの。
そんな言い伝えをモチーフにした14本だが、視聴者が毎回そのうち7本を選んで組み合わせる形式。そうすることによってエンディングが変わり、正しい組み合わせでないとエンディングが見られないというゲーム体験的な要素もあるそうです。
「コロナ禍だから行き着いた作品と言えるかもしれませんね」
そう静かに語った長谷川さんは、以前インタビューさせてもらった時よりも、穏やかで、発しているものが大きく広がっているような気がしました。