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  • 第2話 本日のお客様への料理『小鍋きりたんぽ』

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🥂2glass

 幸は「正直な人」と言われると、なんだか痒いような気持ちになった。17歳から客商売を始めて、40年にもなる。嘘もいっぱいついた。まあ、相手を気持ちよくさせるための嘘だけれど。
 話題を食べ物に変えてみた。

「矢作さん、お腹は空いてらっしゃいます?」

「ペコペコだね」

「正直な方ですね」

 2人は笑い合った。幸は冷蔵庫から用意していたものを出してきた。

「これ、作ってみたんです。きりたんぽ」

 炊いたご飯を半分くらい潰し、杉の木の串に巻き付けて、焼いたものだった。
 矢作はそれを見てほっこりした笑顔を浮かべた。

「本物だね。ちゃんと杉の串じゃん」

「はい。三関のせりも、比内鶏のスープも買ってきました」

「いいねえ」

 紳士はふと、遠い目をした。

「教授の紹介の見合い結婚だったんだけれどね、一度だけ、僕の狭い下宿に彼女…、今の妻が来てね。ちっちゃい鍋で、きりたんぽをやったことがあったなあ」

「素敵な思い出ですね。奥様も呼んじゃいますか」

「え。いや、寒いし、出てこないよ、きっと」

「そうですか。じゃ、1人前で。あ、お酒どうしますか」

「熱燗にするかな」

「はあい」

 幸は青い徳利をお湯に沈めた。

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