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  • 第11話 本日のお客様への料理『栗の甘露煮、シナモンの香り』

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🥂Glass 2

 その日、ブランチのオープン早々に、大城がやってきた。

「こんにちは」

 凛花の顔がぱあっと明るくなった。幸に「八咫烏でしたね」と耳打ちし、水をもって、大城のところへ接客に行く。

「いらっしゃいませ。今日はパスタの週なので、2種類ありまして…」

「ああ。凛花さんだったね。そうだな、待ち合わせしているんで、来てからオーダーしてもいいかな」

「はい」

 そんなやりとりのうちに、身長170センチ近くありそうな、スレンダーな女性が現れた。
 まるでファッション雑誌から抜け出てきたモデルのようだった。四肢の長さは西洋的だけれど、顔は切長の目のすっとした美人だった。

「お待たせ。ごめんね」

 髪を肩の向こうに流し、バッグを足元の籠に入れた。グレーのニットのワンピースに、フレンチネイル。左の手の薬指に小さいけれどよく光るダイヤモンドの指輪があった。

 凛花の顔が固まった。大きな目が伏せ目になった。何も考えまいとするようにグラスに水を入れて運ぶ。

「いらっしゃいませ。本日はブランチメニューでして、サラダ、パスタ、焼き立てフォカッチャ、コーヒー、紅茶と小さなデザートとなります。海老とセロリのラグーのスパゲッティか、秋刀魚のトマトソースのペンネかをお選びいただけます」

 機械的にカクカクと説明した。幸はその様子を見守るしかなかった。凛花の頑張りようが、切なかった。

「私、スパゲッティの方をいただくわ」

「僕も。ああ。それからスパークリングをグラスで」

「じゃ、私も」

 同じかよ、と、凛花は胸の中でつぶやいた。が、真一文字にした唇の広角を無理やり上げて「かしこまりました」と呟いた。

「オーダーお願いします。海老とセロリのラグーのスパゲッティ、2つです」

「了解」

 そんなカクカクと受け答えする店だったっけ、と思いながら、幸は海老とセロリのラグーをフライパンに二人分、落とした。

「やっぱりただのカラスでした」

 凛花は今度は幸にそう耳打ちすると、フォカッチャをトースターに放り込んだ。

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