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  • 第13話 本日のお客様への料理『ひと皿ずつの参鶏湯』

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🥂Glass 2

 幸はアルザスのリースリングを抜いた。食事をした後、少しほろ酔い。程よい酸味があって、ワインだけでもすんなりと楽しめる味。でもきっといろんなものを飲んでいそうな3人だから、イタリアやチリではなさそうな気がした。
 3つのグラスを供して、幸は微笑んだ。

「仲が良いんですね。ゆっくりされてください」

「はーい」

 女性は小さく顔の横に手を挙げて、話しだした。

「最初は、こっちが彼氏だったんです。でも、今は、こっちが夫です」

「よせよ」

 夫と言われたメガネの男が手で女性の口を塞ごうとした。

「いいじゃない。もうほとんど40年前よ。最初はこの人が彼氏だったんだけど、浮気ばっかりするし。私、ほんと、気持ちが落ち着かなくて。そうしたらこっちの人が、俺が一生守る。君を守る、って言うもんだから。結婚して…35年? 3月で35年じゃない?」

「ま、そのくらいだろうなあ」

「でしょう。まあでもね、みんなもうすぐ還暦だし。もうなんか、全部、思い出だし」

 黒タートルの男は黙って聞いていたが、ぽつりと言った。

「オレ、帰るわ。あの、まだ仕事残っててさ」

 幸は思わず言った。

「ええっ、お帰りになるんですか」

「あ、まあ、これ、飲んだらにします」
 グラスのワインは、注がれたばかりだった。

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