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    第7話 『有紗の帰郷』

《3》

 新神戸に降り立ち、タクシーに乗って、二人はオリエンタルホテルにチェックインした。
 海を臨むこのホテルは、めったに旅行に出られることもない二人の、ちょっとした贅沢だった。
 ガラスの向こうに、ブルーグレーの海と、ぽっと赤いポートタワーが見えた。
 海に面したこのホテルの立地のせいか、見慣れたはずの神戸とはまったく違う表情だった。

「地元やのにねえ、なんか旅行に来たみたい。ありがとうねえ」

 窓辺で、有紗は一瞬、子どものように嬉しそうな顔をした。
 洋三は苦笑いのように唇だけ歪めると、離婚届の入った封筒をコートの内ポケットに突っ込み、ほないこか、と促した。

「とりあえずこれをさっさと出して、な」

 洋三は、その離婚届をさっさと出して、有紗との婚姻届をもらおうと思っていた。しかし一方で、娘の莉奈のことが気がかりだった。気がかりではあるが、莉奈を引き取って、有紗と育てていくなんていうことができるのだろうか。そのビジョンを描けなかった。そんな苦労をこれ以上有紗に課すことが自分で許せないとも思った。
 あまり顔色のよくない洋三を見てとって、有紗も同じようにまた複雑な表情になった。

 街を歩いていると、少し気分が上がった。店が増え、元町も三ノ宮もずいぶん活気が出ていたからだ。

「そっか。ルミナリエ、やってんねんや」

「夜は見に行こう」

「ほんま」

 有紗はちょっと考えて言った。

「莉奈ちゃん、誘おう」

「え、何言うとお」

 洋三は有紗の顔を覗き込んだ。意を決したような、有紗のまっすぐな瞳があった。

「うん」

 洋三は胸の高鳴りをおさえるように、あわてて、スマホを手にとった。

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